2024年4月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年2月18日

イラン核問題は解決された

 この社説が言うように、イランが核合意をきちんと履行し、対イラン経済制裁が解除に至ったことは大変良いことです。

 対イラン戦争でホルムズ海峡が閉鎖されるような事態がなくなっただけでもありがたいことです。国際原子力機関(IAEA)の査察がしっかりと行われるようですから、イラン核問題は解決されたと言ってよいでしょう。ネタニヤフは、イランは核武装の野心を捨てていないなど言っていますが、今は空虚に聞こえます。

 米・イラン関係の今後については、収監者の相互釈放、拘束水兵の釈放は良いニュースです。米国のイランでの利益代表はスイスですが、この問題の話し合いはスイスの助力を得ながらも、直接に米・イラン間で行われたようです。しっかりとしたチャネルが米・イラン間にできています。米・イラン間の協力関係が今後進むのではないかと思われます。

 この社説には言及がありませんが、米・イラン間にはお互いに請求権の問題がありました。オバマの演説では、これも解決に至ったと言及されています。戦争後の平和条約で請求権処理が行われるケースが多いですが、米・イラン間の発展への障害がここでも取り除かれています。

 米国がミサイル、テロ、人権を理由に課した対イラン制裁は大したことではありません。サウジなどに対し「イランと親密になるわけではない」というメッセージを送ったくらいの意味しかないように思われます。日本の新聞で、「オバマの対イラン政策、硬軟両様」と書いているものがありましたが、硬軟が同一の比重を持つとは言えません。今回の件は経済制裁解除に力点があります。

 そして、イランの石油が国際市場に出てきます。増産は、まず50万バレル/日、次に100万バレル/日でしょうが、石油の供給過剰になり、石油価格はさらに下押しされることは確実です。

 ロウハニ大統領が議会選挙もあり、制裁解除された資金は国民の福利にために使おうとするだろう、との判断は正しいと思われます。

 なお、この合意が対北朝鮮のモデルになればよいですが、中国の存在、国民の意向をイランは北朝鮮より尊重していること、の2点で違いがあるように思います。

  
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