2024年12月4日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年2月19日

 もしロシア経済が今年も縮小するならば、我々は長期的下落の始まりを見ていることになろう。もしそうなら、停滞は回復にではなく、何年も続く急な下落に入っていくことになろう。これは2018年以降のプーチン第4期にも続くだろう。

 1990年代や2000年代始め、ロシアは混乱していても希望があった。投資家はダイナミックで改善基調の国内状況に引きつけられていた。2012年以降それは変わり、今ロシアは幻滅の領域になった。2016年に成長が戻らないと、ロシアは経済的自壊の時期に入ったことを意味しうる。それがプーチン第3期を特徴づける。

出 典:Vladislav Inozemtsev ‘Putin’s self-destructing economy’(Washington Post, January 17, 2016)
https://www.washingtonpost.com/opinions/russias-economy-of-disillusionment/2016/01/17/0803598e-bb97-11e5-829c-26ffb874a18d_story.html

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“停滞”ではなく“衰退”の時代へ

 この論説の趣旨には賛成します。ロシアは経済面では停滞ではなく長期的な衰退過程に入ったと思われます。よくなる気配がありません。

 石油価格は、ここしばらくは1バレルあたり30ドル付近またはそれ以下になるでしょう。ロシアの予算の想定価格50ドルをかなり下回ることになり、財政面で苦しくなります。イランの石油が市場に出てくる中で、またOPECが減産で合意する見通しがない中で、また中国経済の減速の中で、それ以外の予想は立てがたいです。

 資源に依存する経済を、もっと製造業などが強い経済にする改革には失敗したと言わざるを得ません。「資源の呪い」にとらわれてしまったと思えます。

 プ-チンは、政治は権威主義であるが、安定と経済的福利を国民に提供してきました。それが人気につながっていました。しかし経済が停滞に陥るなか、今は国民のナショナリズムを支持基盤にするべく、国際的に影響力を取り戻したロシアを演出しているところがあります。しかしウクライナにせよ、シリアにせよ、経済的にはマイナスです。ロシアからの移民が2015年に40万人にもなるということは、人々がロシアの現状に愛想をつかしてきていることを示しています。そのほとんどは優秀な若者でしょう。言論の自由もなく、医療、教育は劣悪で、汚職は蔓延し、エリートは地位を利用して私腹を肥やすと言う状況で、将来への希望を若者が失うのは自然です。

 プーチンは国力にそぐわない地政学的地位を求め、結局ロシアを衰退させてしまう可能性が大きいように思われます。

  
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