もちろんハイパーループが実現するには、まだまだクリアすべき課題は多い。その最大のものが、0.5Gと言われる重力に乗客が耐えられるのか、という問題だ。これは宇宙ロケットとまではいかなくても戦闘機なみのGだが、アールボーン氏は「普通の航空機と同じくらいの感覚」にPodデザインによって持っていける、という。
カリフォルニアの次は中東
次に真空に近いチューブ内を高速で移動する乗り物だけに、地震の多いカリフォルニアで安全性は保たれるのか、という問題。これも「耐震構造によりチューブは守られており、災害時の緊急ストップなど、対策は万全」というが、テストを繰り返さないことには絶対は得られない。
しかしアールボーン氏は自信たっぷりで、カリフォルニアの次は中東、アフリカ、そして欧州にもこのシステムを売り込む、という未来図まで描いている。
このほかにもMITの研究者チームなど、ハイパーループ計画に興味を抱き、6月のコンペに向けて準備を進めるグループが複数存在する。コンペの参加者はスペースXの施設の一部に建設された約1キロのテストトラックを使用でき、「人が乗れるサイズのPod」を開発、テストすることができる。
現代のトーマス・エディソンと呼ばれるマスク氏のアイデアから、実現に向けて様々な道を歩み始めたハイパーループ。シリコンバレーの投資家が集まったテクノロジー社が先に実現して商業利用の権利を得るのか、あるいはマスク氏の元でコンペを勝ち抜いたチームがハイパーループの本命となるのか。6月のコンペの結果、SFの世界のような技術が本格的に実現に向けて始動し始めるかもしれない。
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