2024年11月21日(木)

WEDGE REPORT

2016年2月24日

一気呵成の既成事実づくり

 アサド大統領はこの共同声明が発表された直後、人民議会(国会)の選挙を4月13日に実施すると発表し、自らの主導権で「新生シリア」を演出しようと一気呵成の既成事実づくりに乗り出した。このアサド氏の発表は事前に、プーチン氏と綿密にすり合わせた上であったのは間違いないだろう。

 このアサド氏の発表を米国が事前に知っていたかどうかは不明だが、もし知らなかったとしたら、プーチン氏にはめられたということにもなりかねない。いずれにせよ、アサド氏はこの発表で、自らが権力にとどまる意向であることをあらためて示したことになり、この点も反体制派をはじめ、サウジアラビアやトルコなど反アサド勢力は認めることができまい。

 仮に停戦が実現したとしても、国土の半分をISに支配されている中で4月までに正当な選挙を実施するのは不可能だ。そもそも2200万人の国民の半分が難民になり、450万人が海外に流出している現状を考えれば、「アサド氏の主張は茶番にすぎない」(ベイルート筋)。

 それでもなお、アサド氏が選挙の発表を行ったのは、実際に選挙ができるかどうかが問題ではなく、政権維持のための既成事実づくりのためだ。プーチン氏とこのシナリオを描いたとすれば、2人は本当に食えない政治家である。

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