2022年9月28日(水)

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2016年3月22日

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「~ヶ丘」「~台」

 2015年9月の関東・東北豪雨では、鬼怒川の陰で目立たなかったが、埼玉県越谷市の東武鉄道せんげん台駅一帯が冠水した。この「せんげん台」の名称は、近くを流れる千間堀(新方川の旧称)の名を借用したものである。越谷市と春日部市の市境付近には沼地が点在していたが、江戸前期に沼地を干拓し、悪水の排水路として掘削されたのが千間堀。全長約11キロメートルで実際の長さとは異なるが、「長い」ことを象徴的に「千間」と表現したもの。

大都市圏には水害に由来する地名が数多くある(iStock)

 私が埼玉県大宮台地上の公団住宅に移住したのは今から47年前だったが、その数年後、台風時だったかに豪雨禍があり、県東部の某市で洪水が起き、「~ヶ丘」という名の住宅地が市内で最初に浸水した、と聞いた。当時、全国各地で、沼地・湿地・水田に数十センチメートルばかり嵩上げして「~ヶ丘」・「~台」と称して売り出す商法が横行していた。これは本来何らかの意味をもつ地名をなくす行為で、あってはならないと考えている。

カケ・ガケ

 関東平野ではないが、静岡県掛川市の名は「ガケのある川」ではなく、「決壊する(したことのある)川」のことであろう。同じカケル(欠)という動詞が名詞化した地名でも、丘や山の斜面が欠ければガケになるが、堤防が欠ければ決壊箇所になる。

 平野の中にガケがあるというのは景観矛盾だが、関東平野にはいくつか点在する。埼玉県八潮市垳は近年、「平野の中にガケとは変だ」という市役所の判断からか、新地名に変えられようとしている。住民は猛反発しているが、市当局は「垳」という常用漢字外の国字(日本製の漢字)がどうにも我慢ならぬらしい。それをいうのなら、栃木県の県名の「栃」も国字だが……。

東海地方の地名

 名古屋圏は、日本で最も危ない大都市圏ともいえる。東海地方は台風・高潮・洪水のみならず、地震・火山噴火などあらゆる災害が発生する。この100年余りでも、1891年の濃尾地震(M8・0)、1944年の東南海地震(M7・9)、45年の三河地震(M6・8)、46年の南海地震(M8・0)、59年の伊勢湾台風、2000年の東海豪雨、2014年の御嶽山水蒸気噴火など、いずれも先進国の大都市圏としては稀に見る大災害である。

押切、堀越、猪之越、荒越

 とくに近年では、2000年9月の東海豪雨災害で名古屋市の北から西を廻る1級河川の庄内川の排水用に掘削された支流の新川が100メートルもの長さで決壊し、西春日井郡西枇杷島町から下流にかけて深さ3~4メートルも冠水した。その時の決壊箇所ではないが、西区には押切・堀越、下流の中村区には猪之越、中川区には荒越など越水関連と思われる町名が点在する。押切は「水流が堤防を押し切った地点」のことで関東平野にはあちこちに点在する。地名に使われた「猪」の文字は「井」の当て字で、「井=水流・川」のことである。

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