2022年10月6日(木)

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2016年3月22日

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安八

 古代、美濃国の郡・郷名。古くはアハチマ、近代にアンパチと読む。アハ(暴)チ(方向)マ(場所)で、「海中から現れてくる土地」のこと。中世から盛んに輪中が形成され、濃尾平野西部に大水田地帯が形成された。1976年、岐阜県安八郡安八町大森の長良川右岸が500メートルにわたって決壊。約8000名が緊急避難した。

関西地方の地名

 兵庫県の六甲山地南腹には、湊川・布引(ぬのびき)川・住吉川・都賀(とが)川などの中小河川がいく筋も流れる。山頂から水平距離で2~3キロメートルの間に800メートルほど落下し、山麓の傾斜変換点から海岸までさらに2~3キロメートルの間を数十メートル流れ下る。山腹を流れる部分は川というより滝で、深い峡谷を刻む。山体は風化花崗岩で、しかも数条の断層帯に刻まれているからきわめて脆(もろ)く、紀伊水道から大阪湾を抜けて湿った風が吹きつけると、ちょっとした雨量でも、山腹を刻む住吉川はじめ中小河川が氾濫し、土石流や洪水を起こす。

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 1938年、六甲山周辺を中心に死者・行方不明715名を数えた、阪神大水害が発生した。この災害は谷崎潤一郎『細雪』にも描かれたが、これを機に中小河川の改修が進んだ。戦後の高度経済成長期に山麓から山腹にまで宅地化が進み、危険性はさらに増している。近年では2008年、灘区を流れる都賀川で突発的土石流が発生、河川敷で遊んでいた5名が犠牲になった。

 江戸時代から「灘五郷」の酒造地として名高い。この「灘」を凹凸の少ない海面をいう「~灘」の名が陸上に転じたとする説があるが、間違い。積雪地帯で雪層が崩れることを雪崩(なだれ)というが、この語は本来、ナ(土地)・タレ(垂)が語源である。雪に限らず、地面が崩壊した地に「灘」の地名が付けられた例も全国にいくつか存在する。

御影

 神戸市東灘区にある地名で、「御影石」は良質の花崗岩石材の代名詞ともなった。この地名は古代の神話的人物像の神功皇后に関連付けて語られるが、実は「ミ(水)・カケ(欠)」が語源か。動詞が名詞化するとき、二音節目が濁音化した例はカケ(掛)→カギ(鍵)などいくつかある。御影は、土石流による欠損箇所に付けられたものの可能性がある。

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