2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年3月25日

 南シナ海における米国の情報・監視・哨戒能力は、今年1月フィリピン最高裁で米比拡大防衛協力協定が合法化されたことで確実に増強されよう。

 2016年には南シナ海における緊張が今まで以上に高まることが予想されるが、中国のさらなる侵略を抑止し、東南アジア諸国の権利を支援し、紛争管理のための政治的妥協を目指す多国間キャンペーンを行っていく余地があろう。

出 典:Gregory B. Poling ‘A Tumultuous 2016 in the South China Sea’(CSIS, February 18, 2016)
URL:http://csis.org/publication/tumultuous-2016-south-china-sea

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 2016年には南シナ海における緊張が今まで以上に高まりそうである、と米シンクタンクCSISのポリングが述べています。

 習近平政権は、「南シナ海は古代以来中国の領土である」との独善的な領土拡張の主張をくり返し、一部パラセル諸島において、地対空ミサイルを配備しつつあります。本年には、中国とフィリピン、マレーシア、ベトナムなどの間で、漁民、石油探索船、航空機の活動などをめぐって、局地的衝突が起こる可能性が強いとの本論評の予測は当たっているように思われます。

オバマ大統領の任期中を好機とみる中国

 米国の活動については、「航行の自由作戦」の頻度が上がりつつあると本論評は述べていますが、これまでのところ、2カ月に一度程度の頻度で、中国の主張する島嶼の領海や接続水域の中を米艦船が航行する程度にとどまっています。それに対し、中国はそのような米軍の活動の前で、さらに島嶼拡張工事、ミサイル配備など軍備強化に向かいつつあります。

 中国としては、オバマ大統領の任期中が南シナ海での拡張を図る好機と見ている可能性もあります。

 最近行われたASEAN首脳とオバマ大統領との会談においては、踏み込んで具体的に中国の対応ぶりを非難するには至りませんでした。中国からの働きかけがあったのでしょうが、ASEAN10カ国の足並みが一部国家のために揃わなかったことが露呈しました。

 ハーグの仲裁裁判所が中比間の仲裁結果を5月にも公表すると報道されていますが、中国は同裁判所の管轄権そのものを拒否するのではないかと思われます。中国としては、あくまでも各個撃破の形で、自らのペースで南シナ海の問題処理を目指すとの方針に変わりはなさそうです。

 日本としては、米国、ASEANの主要国と歩調を合わせた形で、国際ルールにのっとり本件を処理する方向で、これら国々と引き続き協力する必要があります。

  
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