2024年12月27日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年3月28日

 専門家会議(任期8年)の選挙も今回は重要である。ハメネイは76歳で病気と言われており、その後継者を選ぶことになろう。反動的な現議長モハンマド・ヤズディと、アハマドネジャド陣営の指導者、モハンマド・タグリ・メスバフ・ヤズディは、議席を失ったようである。そのうえ、ハメネイの代わりに最高指導者ではなく、評議会を選ぶとの話もある。

 ハタミや他の改革派は、イスラム共和国の核心的アイデア、ホメイニのヴェラーヤテ・ファギーフ(法学者統治)に挑戦しないで失敗した。ロウハニはそんな挑戦をする必要がないことになる可能性もある。

出典:David Gardner,‘Iran reformists find strength in numbers to secure place in polls’(Financial Times, February 28, 2016)
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/2874e858-de20-11e5-b67f-a61732c1d025.html#axzz41ZcpQJtw

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 今回の選挙は核合意という大きな進展があった後で、それを推進した穏健派が躍進した選挙であり、その意義は大きいものがあります。

共和国的側面増すイラン

 第1に、核合意と制裁解除を取引するロウハニ大統領の路線はイラン国民の大勢により支持されたと考えてよいでしょう。イランが特に経済面で国際社会に復帰してくることは確実です。大きなビジネスチャンスが出てきます。石油情勢についても、価格を下押しする方向で輸出量が増えることになるでしょう。これは選挙前からそうなると考えられていましたが、その方向性がよりしっかりしてきたと言えるでしょう。核合意は大筋で順守されるでしょう。

 第2に、イランはイスラム共和国です。その政治にはイスラム的側面と共和国的側面があります。ガードナーは、後者の面が強くなってきていると評価しています。

 イランの政治では、最終的権力はイスラム法学者である最高指導者に帰属しますが、他の面では民主主義的な決定による側面もあります。革命から年月が経つにつれ、共和国的制度、言い換えれば民主主義的制度の権力が強まっていると言えます。ただ、軍に対する最高司令官はハメネイであり、ロウハニ大統領ではありません。現秩序を守る保守派にはよりどころとするところが多くあり、ガードナーが示唆するようにヴェラーヤテ・ファギーフ(法学者統治)が簡単に力を失うとは思えません。ただ、最高指導者が評議会に変わると、大きな変化になります。

 なお、イスラムには政教分離の考え方はありません。サウジにおける王家とワッハーブ派の関係もその現れです。ただ、イランは法学者の統治を掲げている点が特殊です。

 イランの国内政治、対外政策がどうなるか、大国であるがゆえに、今後我々は注意を払っていく必要がありますが、方向としては良い方向に変化していることに疑問の余地はありません。変化を促す方向で、対イラン関係を進めていくのが良いと思われます。スティムソン元米国務長官は「人を信頼に値する人にするには、その人を信頼していくしか方法がない」と言ったことがありますが、イランについても、そういう態度で臨んでいくしかないのでしょう。

  
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