当日、講師の前に整列した少年たちの表情は硬かった。運動する楽しさよりも不安が勝っているようで態度もぎこちなかったが、ラグビーボールを使ったリレーゲームからは一転して盛り上がり、少年たちと講師間の距離が縮まった。
入園時17歳以上、20歳未満(在園中に20歳になる少年もいる)という少年たちだが、その表情は同じような年代の若者たちよりも幼い印象を受ける。高校生の体育の授業といった雰囲気だ。
絶妙な声掛けで少年たちの表情が和らぐ
ディフェンスを付けないランニング&パスでは、走るコースやパスを受けるタイミングでの声出しなどを学び、その後の「1対2」や「2対3」と呼ばれるディフェンスを付けた練習では、お互いにコミュニケーションを図りながら、ボールを前に運ぼうとする様子が見て取れた。もちろんミスも多くすぐに出来るわけではないが、指導者の意図を理解し、それに応えようとしていることは明らかだった。
印象的だったことは「ナイスパス!」や「ナイスラン!」「いいね、そのタイミング!」などと講師から声を掛けられた少年たちの表情が、はにかんだようにパッと明るくなったことだ。ふたりの講師は全ての少年に声を掛けたはずである。言うまでもないが、声を掛けられ、褒められれば人は嬉しくなるし、さらに頑張るようになるものだ。
「最初はみんな表情が硬いし、こちらが何を話し掛けても反応がなくて、どう接しようかと考えてしまいましたが、いったん声が出始めると早いですよね。どんどん出るようになってきました(笑)。言われたことを一生懸命やろうともしていました。反応が無かったのは伝わっていないんじゃなくて、外部の我々に対してどう対応していいのか、わからなかったということですね」と土佐は笑った。
筆者は講義全般を通じて少年たちの表情の変化に注目していたが、開始から30分、1時間と経過するうちに、講師はもとより、仲間同士の距離感も縮まっていったのではないだろうか。2時間はあっという間に過ぎていった。