米連銀の利上げペースが予想より遅れてドル安、その局面でマネーがドルを売って原油先物に入ったのだ。アメリカの株式市場が上向くと原油先物も上向くのが常道である。中国の財政出動がありそうじゃないか。原油だけでなく国際商品先物のいくつかが強気局面、年明け以降、金や白金や天然ゴムの国際相場が上がっている。サウジとロシアが需給調整を目指して、近々、話し合う。相場見通しに定評があるヘッジファンド筋が、「これからは“multi-year bull run”だ、60ドル、70ドルと上がってゆくだろう」、と言ったそうだ……。わぁ、百花繚乱ではないか!
そう、何でもありなのです。
様々に飛び交う材料と思惑の坩堝から、今日の価格38ドル、が取り出されるのだ。
石油先物市場の誕生:再説
前回の投稿で、1982年頃に現われたロンドン・ブレントクラブ先渡し市場を紹介して、以下のように書いた。
「価格が将来下がる見通しが大いにありそうならば、今現在の価格レベルで、1年後の原油を売れないものか。誰か買い手を見つけてきて、今日の原油価格、例えば35ドルで価格を成約し、実際の原油の受け渡しを1年後、と決めておけばよい! これが先渡し取引市場(Forward)である」
この市場の誕生を胴元目線に近い立場で経験した。胴元は北海原油の生産者である。将来の価格崩落を心配して、将来に生産する原油を”絶対値”で先売りし、井戸元の収益を確定させようとしたのだ。これは、まったく凄いビジネスモデル・イノベーションだった。石油メジャーが何を狙ってこの市場を設計し、他の石油トレーダーたちをクラブメンバーに勧誘するのか。その真意を、卒然、理解できた時の胸震える興奮は忘れがたい。
実は、このイノベーションの背景にシェルグループ世界戦略部門の深い洞察と長期戦略があった。トレーディング部門単独でこんな大仕掛けのリスクをとれるはずもない。筆者がこれを知ったのは、さらに10数年後、90年代中頃のことだ。