たとえば、昨年8月6日に開催された第1回共和党テレビ討論会で、フォックス・ニュースの女性キャスターで同討論会の司会を務めたメーガン・ケリー氏が同候補を公平に扱っていなかったと抗議をしています。トランプ候補は自分に対する質問が、他候補のそれと比較して厳しく不公平であったと議論したのです。それ以後、同候補はテレビ討論会が開催される度に、討論会の内容を公平・不公平で評価するようになりました。
これに加えて、指名獲得のルールに関してもトランプ候補は、独自の「不公平理論」を唱えています。クルーズ上院議員との代議員獲得争いが激化し、夏の共和党全国大会での決戦投票の可能性が報道されるようになると、トランプ候補は自分が最も予備選挙・党員集会で得票数が多い点を強調し始めたのです。その背景には、決戦投票に持ち込まれると、同候補よりも得票数が少なかった候補が指名獲得をする可能性が出てくるからです。同候補は、そのような事態を予想し、得票数が最も多い候補が指名を獲得できないのは不公平だと議論するのです。
決選投票、TPP、日米安全保障まで不公平
さらに、獲得代議員数において過半数の1237人に最も近い数字を残した候補が指名を獲得できずに、決戦投票で突然現れた第3の候補に指名を奪われるのも不公平であると論じるのです。トランプ候補には、そもそも共和党全国大会で新しいルールで指名獲得を行うこと自体が不公平であるという意識が強いのです。同候補は、新しいルールをエスタブリッシュメント(既存の支配層)とワシントンにいるインサイダーによって作られたものだと主張して、反エスタブリッシュメント並びに反インサイダーに訴えるのは間違いありません。
トランプ候補の不公平に関する議論は続きます。通商問題と安全保障政策においても、トランプ候補は不公平理論を展開します。北米自由貿易協定(NAFTA)及び環太平洋経済連携協定(TPP)は相手国に有利な協定であり、米国には不利で不公平であると捉えています。
トランプ候補は、米ニューヨーク・タイムズ紙とのインタビューで日米安全保障条約について、「米国が攻撃されても日本は何もする必要がない。日本が攻撃されれば、米国は全力で出かけていかなければならない」と述べて、条約が片務的で非常に不公平であると主張したのです。ここでも、独自の不公平理論に基づいて論じているのです。