ニューヨーク州での決戦を前に、トランプ候補は同州ロチェスターで集会を開き、現行の共和党予備選挙・党員集会の制度を「不公平なシステム」と批判したうえで、民主党予備選挙・党員集会についても触れたのです。同候補は、バーニー・サンダース上院議員(無所属・バーモント州)が各州で勝利を収めても、ヒラリー・クリントン候補に勝てないのは、民主党の選挙制度が崩壊しているからだと指摘したのです。
余談ですが、トランプ候補と同様、今回の大統領選挙において民主党候補指名争いで旋風を起こしているサンダース上院議員も、不公平理論を使用しています。ウォール街に公的資金を投入して金融機関を救済したのだから、今度は学生ローンに苦しんでいる若者をウォール街の金融機関が彼らを救うのは当然だと言うのです。
本論に戻りましょう。では、どうしてトランプ候補は今回の米大統領選挙において不公平に関して繰り返し言及するのでしょうか。それに関して、以下で説明しましょう。
不公平に怒るトランプ支持者
昨年夏に中西部アイオワ州デモインで戸別訪問を実施していると、白人男性が筆者に声をかけてきたのです。
「不法移民は、税金を支払っていないのに教育を受けているのは不公平だ」
この白人男性は、不公平に怒っていたのです。同じくアイオワ州デモインでクリントン陣営が標的としている無党派層を訪問した時、この家の白人男性は退役軍人が不法移民よりも待遇が悪い点に不公平感を持っており、怒っていたのです。
上の2人の白人男性には、共通点がありました。第1にトランプ支持者であり、第2にトランプ候補の不公平の議論に共感し、第3に同候補に対して強いアイデンティティーを持っていました。トランプ支持者の中でも、特に核となっている熱狂的な支持者を理解するキーワードは不公平です。