2024年4月25日(木)

海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年4月13日

 学問的に言いますと、モチベーション理論の1つである公平理論を用いてトランプ候補の動機づけの手法を分析できます。公平理論では、人は自分の貢献(インプット)と結果(アウトカム)と、相手の貢献と結果を比較します。貢献には、金、教育、経験、能力、努力、スキル、時間、エネルギーなど、結果には給料、昇進昇格、有給休暇などのベネフィットや作業条件などが含まれます。比較する相手に対して不公平感が大きければ大きいほど、緊張感が生じ人はそれを解消しようと動機づけられるというのです。不公平から発生する緊張や怒りの解消には、正と負の動機づけがあります。

 正に動機づけられた人は、一層努力し結果を高めようとします。ところが、今回の大統領選挙でトランプ候補は、不公平感を持つ支持者を負の方向へ動機づけているのです。彼らの貢献と結果は変えずに、相手(不法移民・イスラム教徒)の貢献と結果を変えようとしているのです。一般に、不法移民は高い技能を必要とする仕事には就いてはいませんが米国経済の底辺を支えており、一方、イスラム教徒は連邦下院議員をはじめ、多くの分野に進出し米国社会に貢献しています。

非常に極端な解消法

 同候補が主張するアメリカとメキシコの国境の壁やイスラム教徒入国全面禁止は、確かに上で紹介した白人男性や退役軍人にとって緊張や怒りを解消する動機づけになりますが、不法移民とイスラム教徒の貢献を否定する点において、非常に極端な解消法と言えます。そのような解消法は、到底受け入れる訳にはいきません。

 トランプ候補にとって、公平・不公平は極めて重要な概念です。仮にトランプ候補が本選に進んだ場合、今後も支持者の不公平に対する怒りを使い、彼らを負の方向へ動機づける手法をとってくると筆者はみています。

  
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