騎馬兵のタイトルは“回民支隊”とあり説明によると英雄的若者達が紅軍(現在の人民解放軍)の指導の下に決起して紅軍と連携して得意の騎馬戦により邪悪な日本軍を蹴散らしたというストーリーのようだ。史実として紅軍がこの地域で回教徒と一緒に日本軍と戦ったというのはあり得ないように思われるが、当時の文盲が大半の貧しい農民には格好の娯楽として拍手喝采を浴びたであろう。仔細に当時の映画タイトルを見てゆくとやはり抗日戦争をテーマにした作品が多い。
(写真右)「回民支隊」つまり「回教徒部隊」の抗日奮戦記の映画ポスター
抗日戦争映画は史実としては実際に日本軍と戦ったのは主として国民党軍であるにも関わらず、あたかも紅軍が抗日戦争の期間中に中国全域で日本軍と戦ったように描かれている。ナチスの宣伝相であったゲッペルスの言葉である「嘘でも100回繰り返せば真実となる」を独裁政党である中国共産党は70年にわたり忠実に実行しているように思われた。
建水古城のビデオショップ
3月12日 建水は唐代より栄えた町で、建水古城(旧市街)は城壁と東西南北の大門に囲まれた南国情緒漂う緑豊かな美しい街である。路地裏をぶらぶら散歩していると町のビデオショップがあった。ガラス戸には新着ビデオの宣伝ポスターがベタベタと貼られている。戦争映画が多いが、よく見ると案の定、全て抗日戦争映画である。娯楽映画としてのクオリティーが1990年代に中国のTVで放映されていた抗日戦争映画と比較して格段に向上進化していることに驚いた。主人公は現代的イケメンでありヒロインもモダンな美女である。戦闘場面のスティール写真もハリウッド的な出来栄えである。敵役の日本の軍人の描写もリアリティーがある。
そういえば大理、麗江、香格里拉と雲南省を巡っている間に町の食堂で食べているときにTVで何度となく抗日ドラマを目にする機会があった。昼間の時間帯には再放送と思われるドラマ、ゴールデンタイムには新作の大型作品が流れていた。1930年代の上海における抗日地下組織を題材にしたドラマなどは当時の街並みや自動車などを忠実に再現しており、健気なヒロインが抗日同志を救うために挺身する姿に私自身も感情移入してしまうほどであった。
日本のゴールデンタイムでもかなりの視聴率が取れるのではないかというレベルであった。実際にはフィクション90%のストーリーであろうが、余りにも丁寧にディテールまで当時の上海の風景を再現しているためストーリー自体があたかも史実であるように思われしまった。上質の娯楽番組でありかつ同時に政治教育番組となっている。