確かに自動運転の技術レベルはトップ水準かもしれないが、山口副社長がこだわる「Fun to Drive」の層がどれだけいるだろうか。そもそも、若年層の自動車離れが進んでいる中、車は単なる運搬手段だからハンドルもブレーキもないロボットタクシーでいいということになりはしないか。車は人間を目的地に運ぶだけの道具でしかなく、多くの人が車の運転以外に楽しみを求めるようになったら、日本の自動車メーカーの戦略は大外れとなる。最終的には利用する側が決めることになるが、ハンドルの付いた自動運転車が売り出したときにガラパゴスカーにならなければいいのだが。
現在、世界の主要な自動車メーカーは自動運転車の開発に力を入れている。トヨタ自動車とホンダは20年をめどに高速道路で車線変更が可能な車の開発を目指している。米ゼネラル・モーターズ(GM)は17年に高速道路で自動運転機能を搭載した「キャデラック」を発売するとしている。一方、グーグルは15年から米国の公道でハンドルやブレーキのないロボットカーと呼ばれる試作車を走らせており、市場では17年にも販売を開始するのではないかと言われている。
責任の所在
山口副社長は自動運転が普及するためには官民挙げての啓蒙活動が必要だとしているが、課題がいくつも残されている。①法規定の整備②責任の所在の明確化③社会的受容性④国際協調・国際基準調和―の4つを挙げられ、こうしたソフト面の解決を急ぐことが技術面の開発を促進することにもつながる。
最大の課題とされているのが、自動運転車が事故を起こした場合に、誰が責任を取るかだ。準自動運転の車の場合はドライバーの責任とされているが、完全自動運転車になると車に責任が負わされることになりそうだ。だが、ドライバーと車のどちらが責任を負うのかグレーな部分もあり、責任の所在をどこに求めるのか、今後詰めなければならない部分も多い。ドライバーか自動車メーカーのどちらが責任を負うかによっては、自動車保険への影響も大きく、現在、損害保険会社の間でも検討されている。
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