合意非難の国会決議は採択される可能性も
そうは言っても、与党が過半数を割り込んだのだから朴大統領への打撃は大きかろうと思う読者も多いだろう。ただ、現在の韓国国会では過半数には大きな意味がない。2012年に改正された国会法(通称・国会先進化法)によって、予算案以外の法案処理には5分の3(180議席)の同意が必要とされたからだ。
李明博政権が数に頼んだ強行採決を繰り返したことへの批判が強かったため、同年末の大統領選をにらんで朴槿恵氏が主導して行った法改正だった。当時から、韓国の政治風土と選挙制度の下では一党で5分の3を占めるのは不可能に近いと見られており、だからこそ与野党が落ち着いた協議を尽くして法案処理するようになるという理想論が語られた。
しかし実際には、重要法案になればなるほど与野党は激しく対立する。朴大統領が妥協をよしとしない対決型の指導者であることもあって、2013年に発足した朴槿恵政権下の国会は「植物国会」と揶揄されるような状態が続いてきた。与党は過半数を超えていたが、5分の3は持っていなかったからだ。おかげで朴政権は、内政でまったくと言っていいほど成果を挙げることができていない。
今回の選挙で第1党となった「ともに民主党」は123議席、与党セヌリ党は122議席で、どちらも過半数(151)にすら遠く及ばない。第3党である野党「国民の党」が38議席。「ともに民主党」とセヌリ党が協力しなければ5分の3というハードルをクリアできないが、1年半後に大統領選を控えているという時期的な問題だけを考えても、それは非現実的だ。国会がスムーズに動けない状況は何も変わっていない。
ついでに言うと、韓国の国会は年間100本近い決議を採択しているので、「決議には重みなど全くない」(与党関係者)。国会決議は過半数でいいから、野党が過半数を占めるようになる国会で慰安婦合意の「無効決議」くらいは採択されるかもしれない。だが、それは基本的に朴槿恵政権への嫌がらせにすぎない。過去に繰り返されてきた対日非難決議の場合、日本で大騒ぎになっているのに韓国では全くニュースになっていないということも珍しくなかったのである。