海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年5月11日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

トランプの「予想不可能」

 トランプ候補の共和党候補指名獲得が確実になりましたので、同候補のキーワードである「不公平」「サイレントマジョリティ」並びに「予想不可能」に焦点を当てながら、以下で指名争いを振り返ってみます(図表3)。

 トランプ候補は不公平感からくる怒りや不満を持った有権者、主として白人男性で高卒以下の低所得者層を引きつけ、支持につなげることに成功しました。筆者が戸別訪問を行った際、ある白人男性のトランプ支持者は不法移民が税金を支払わずに、教育を無償で受けているのは不公平だと議論をしていたのです。

 トランプ候補は、現行の政治・経済のシステムの中で、忘れ去られた人や不公平に扱われている人を「サイレントマジョリティ(物言わぬ多数派)」と呼んでいます(図表4)。

 忘れ去られた人は、白人の労働者階級です。彼らは、共和党が推進する北米自由貿易協定(NAFTA)といった自由貿易及び富裕層を対象とした減税政策において経済的恩恵を受けずに無視されてきた有権者です。

 一方、不公平に扱われている人は、不法移民よりも待遇が悪い退役軍人を指すことは前回の「トランプの変化とクリントンの苦悩」で説明しました。筆者が戸別訪問を実施した際、クリントン陣営の標的となっていた無党派層の退役軍人は、不法移民が退役軍人よりも優遇されている点を挙げて、不公平だと議論をしていました。

 トランプ候補は、「予想不可能」に価値を置いています。同候補は、共和党候補指名争いで、オバマ大統領がアフガニスタン駐留米軍の撤退期限を明らかにした点に関して、敵に情報を与えてしまったと強く非難してきました。というのは、同候補は予想不可能が交渉や取引において自分の立場を強くすると固く信じているからです。

 同候補は、ワシントンで行った外交政策に関する演説で、過激派組織「イスラム国」(IS)に対する具体的な戦略は述べず、予想不可能が重要だと主張しています。確かに、外交経験が豊富でないという見方もありますが、相手に対して予想不可能な状態になることが取引や駆け引きを優位に進めるという同候補の信念が存在している点も看過できません。さらに、トランプ候補は、メキシコとの国境の壁、イスラム教徒米国入国全面禁止、日韓の核兵器保有容認、在日米軍駐留費負担増など予想不可能な言動をとる傾向があります。

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