2024年11月22日(金)

オトナの教養 週末の一冊

2016年9月11日

井上恭介(Kyosuke Inoue)
NHKエンタープライズ エグゼクティブ・プロデューサー。1964年生まれ。京都府出身。87年東京大学法学部卒業後、NHK入局。一貫して報道番組の制作に従事。

 大豆の先物市場は00年以降、需給では説明できない激しい乱高下を繰り返してきたが、井上さんたちは調査を進め、08年のリーマン・ショックの時と同様の実体経済とはかけ離れたマネーゲームにたどり着く。

 「それが、フロリダの投資家が手の内を明かしてくれたインデックスファンド?」

 「そうです。大豆や小麦などのコモディティ(商品)の先物市場は生産量に限りがあったので、元々小さな市場規模でした。けれど原油、穀物、金など異なるグラフを組み合わせ金融商品化したインデックスファンドに、金融緩和で溢れた資金が流入。〝縛り〟がないため相場が高騰し続けます」

 食材が投資の対象になったことで投資家はもうかるが、損をするのは一般消費者だ。現にアメリカでは、この1年で牛肉の価格が2割上がり、牛肉を食べられない人が増えた。

 「でも、日本ではまだ〝牛肉を食べられない日〟は実感できませんが?」

 「中間に複数のクッションがあるので、牛肉の価格はまだ上昇していません。しかし、中国の異次元の爆食は今も進行しており、背後のマネー資本主義の性格も変わっていないので、牛肉をはじめとした食材高騰の危機が去ったわけではありません。要は、グローバルなマネー資本主義の構造を知っておくことです」

 井上さんはそれから、世界を席巻するマネー資本主義への対抗策として、日本伝統の里山・里海資本主義の利点(持続可能性、安心・共生の原理)を熱く語り始めたのだった。

  
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◆Wedge2016年5月号より

 

 


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