世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年5月30日

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苦境にあるのはロシア側

 それでは欧州はどうするか。外交官は空白を嫌うので、サイバーテロや気候変動など、あれやこれやロシアとの「関与」という提案が出て来る。しかし、大したことにはならない。何故なら、一つにはEUの内部が割れているからである。NATO・ロシア理事会は、昔の東方政策を引きずるドイツの社会民主党をなだめるためだったともいう。ウクライナとシリアの後、ロシア軍はどこに出て来るかと欧州は思い悩む。ロシアはNATOとEUを軽蔑し、軍事問題は米国と、政治問題はドイツと取引きすることを好む。というわけで、欧州の対ロシア政策は制裁の定期的な更新を巡る議論に尽きることになる。イタリアその他の「制裁疲れ」にも拘わらず、6月のEU首脳会議で制裁は継続されることとなろう。

 ロシアの挑発が原因で、NATOはバルト諸国、ポーランド、ブルガリア、ルーマニアにさらに5000の兵を駐留させることを計画する。7月にワルシャワの首脳会議で正式決定されよう。従って、緊張を和らげようという欧州の政治的試みは兵力配備の強化によって相殺される。ロシアはこれを挑発と受け取り、ワルシャワ首脳会議に向けてさらなる危機とカリーニングラードへの兵力増強があるかも知れない。このことは東方の加盟国を狼狽させる。

 しかし、苦境にあるのはプーチンである。経済はきしんでいる。海外の冒険主義の賞味期限は短い。アクション映画では悪党は力ずくで葬られ、あるいは尊大ぶりがたたって自滅するが、大きなリスクは、悪党はその陰謀が失敗しても、誰もかもを道連れにすることである。

出 典:Economist ‘Quantum of silence’(April 23, 2016)
http://www.economist.com/news/europe/21697239-europe-and-russia-no-longer-know-how-talk-each-other-dangerous-quantum-silence

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