この問題が大きな話題となると、政治家たちもここに参戦した。野党の有力な次期大統領候補の文在寅(ムン・ジェイン)氏は駅の出口に書いてあった「生まれ変わったら、男に生まれますように」というメッセージを引用しながら「悲しいです。(男として)申し訳ないです」とツイッターで表明し、朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長は江南駅を訪問した後「これ以上の嫌悪犯罪が起きないよう、病んでいる世の中を直していきます。追悼現場も残すように措置します」と追悼運動を支持するツイッターを流した。二人の言動が多くの「女性」から拍手と支持を集めたのはいうまでもない。
だが、これに対し男性陣から大きな反発が起きた。悲劇的な事件であることは間違いないが、これは精神病患者が起こした犯罪であり、男性による「女性嫌悪」とは言い難い。この事件を勝手に「嫌悪犯罪」と決めつけること、そしてこの事件を政治的に利用する政治家たちのポピュリズムこそがおかしい、という声が上がったのだ。
ネット上でお互いを「おかしいフェミニスト」「男性優越主義者」と批判した両陣営は、ついにはリアルの世界である江南駅前でも激論を繰り広げ、エスカレートした人たちが物理的に衝突する事件まで起こした。
何でも「嫌悪」のせい。真の狙いは「差別禁止法」?
差別禁止法の発議を主導した極左政党の内部告発
私が違和感を覚えたのは女性嫌悪を主張する女性グループとマスコミの反応だ。彼らは長年に渡って精神病で入・退院を繰り返した病歴を完全に無視し、全てを「韓国社会の嫌悪」のせいにした後、その解決のためには「差別禁止法」を作るべきだと口を揃えたからだ。
そこで思い当たることがあった。2013年内乱陰謀や国家保安法違反容疑で党代表李石基(イ・ソッキ)が逮捕された後、強制解散させられた韓国の親北極左政党「統合進歩党」の存在だ。逮捕と起訴には長年統合進歩党で活動してきた党員の内部告発が決定打となったが、内部告発をした内の一人が殺害の脅迫を受けながらもネット上に自分の履歴と内部の事情を暴露した。統合進歩党は「差別禁止法」の制定に最も積極的な活動を繰り広げていたが、元党員の内部告発者が暴露した情報の中には次のような内容が入っていた。
野党らが差別禁止法を発議したが、制定には失敗した。これを最大野党の民統党(現、共に民主党)が発議したために民統党の作品と勘違いする人もいるが、これは統合進歩党代表李石基が主導的に計画した「神の一手」だ。この法の最終目標は「差別禁止」ではなく「左翼保護」なのだ。法案の「出身民族、人種、肌の色、言語、出身地域、思想または政治的な意見を理由に差別を禁止する」という内容の中で最も重要なのは「思想または政治的な意見」だ。もしあの法律が国会で通過されていたら、既存の「国家保安法」が無力化される。