2024年11月22日(金)

World Energy Watch

2016年6月16日

英国のEU残留か離脱かの選択

 2015年の総選挙に際し、キャメロン首相は英国とEUとの関係を改善し、その上でEUに留まるか、離脱するか国民投票を行うと公約した。EUとの加盟条件の再交渉の結果、今年2月に英国は移民の福祉利用の制限などEU内での特別な地位を認められたことから、6月23日に国民投票が実施されることになった。英国は1973年にEUに加盟したが、2年後の1975年にEU離脱か残留かの国民投票が行われたことがある。その時には残留支持が67%と多数を占めた。しかし、加盟国が28ヵ国まで拡大し、移民、さらには中東からの難民という難しい問題を抱え、欧州委員会(EC)の権限が強くなった現状は当時とは事情が異なる。

 英国政府のオズボーン財務相はEU離脱により英国経済は6%縮小すると警告したが、残留を支持する政権は無論のこと、IMF、OECDなどの国際機関、あるいは英国産業連盟(CBI)などによる離脱か残留かを分析したレポートは、総じて残留にメリットがあるとの意見だった。例えば、CBIはEU離脱により2020年までに失われる算出高は1000億ポンド(15兆円)に達し、最大95万人の雇用が失われ、2020年の失業率は2、3%高くなるとしている。米国のオバマ大統領もEU残留を支持しており、もし離脱し米国と貿易条件の交渉が必要になるならば、交渉の待ち行列の最後に並んでもらうことになると述べている。

 それでも、英国内では離脱を支持する声も多く、最近の世論調査では残留か離脱かは拮抗している。6月6日付けフィナンシャルタイムズ紙では45対43で残留が優勢、6月12日付けインディペンデント紙では55対45で離脱が優勢となっている。離脱支持派の主張は、ECの権限が強くなり過ぎたこと、英国の分担金が巨額になること、あるいは英国内に移民が増えることだ。


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