EUをヒットラーに例えるジョンソン
離脱を主張する政治家の中でも極めて過激な発言を行っているのは、ジョンソンだ。国民投票に向け、離脱、残留両派の公式な活動が4月15日に解禁になったが、その前にジョンソンは、EU離脱は脱獄のようなものだとし、「看守が偶然刑務所のドアを開けたままにしてしまった。その向こう側には太陽が輝く土地があるとわかってしまったようなものだ」と述べている。
5月15日付けテレグラフ紙は、さらに過激な発言を伝えている。ジョンソンはEUをヒットラーに例えたのだ「ローマ帝国の黄金の時代を取り戻すために欧州を統一しようとの試みが繰り返されたのが、過去2000年の欧州の歴史だった。ナポレオン、ヒットラー、多くの人が試みたが、全て悲劇に終わった。この統一を違う形で試みているのがEUだ。しかし、基本的に不足しているものがあるのが永遠の課題だ。即ち、欧州統一に関する下敷きとなる忠誠心はないし、誰もが敬う、あるいは理解できる単一の権力はない。それが、このとてつもない大きさの民主的な虚構を作り出している」。
ユンカーEC委員長から名指しで非難される
ECは英国の国民投票については部外者との立場であり、発言を行わない方針だったが、EUをヒットラーに例えた発言はさすがに腹に据えかねたとみえ、G7出席のために訪日中だったユンカーEC委員長は、ジョンソンの発言を批判して次のコメントを述べた「ジョンソンは、かつてブリュッセルで記者生活を送ったと英国の新聞が書いている。もう一度ブリュッセルに戻ってきて、英国民に自分が語っていることが事実かどうか調べたほうがよいのではないか」。
さらに、委員長の部下からは、ジョンソンをトランプ、フランス国民戦線のマーチン・ル・ペン、イタリア5ツ星運動の創始者ベッペ・グリッロと比べるツイートが行われた。トゥスク欧州理事会議長は、「ジョンソンは、政治的な健忘症を患ったとみえ、理性的な会話の境界を超えてしまった。この危険な記憶喪失については一切の言い訳はありえない」と非難した。
その後、ECの広報官から「英国の国民投票に関しコメントしないとの立場に変化はない」としながら、「委員会の義務に関する事項については、英国に触れることはある。それは国民投票とは関係はない」とのコメントが出された。さらに、委員長の部下のツイートに関し「トランプよりクリントンが望ましいとの意味ではない」との発言もあった。