2024年11月24日(日)

海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年6月28日

 彼らはオバマの大統領選の戦略として、

     ①ネガティブキャンペーンをユーモアに変えて心をつかむ、

     ②予備選では党員集会が開かれる州と小さな州を狙い確実に勝利する、

     ③5ドルからの小口献金を導入する

 といったそれまでにないものを行った。

 従来のネガティブキャンペーンは、恐怖心を煽るものが主流だった。例えば、1988年の大統領選で、ジョージ・ブッシュ(父)陣営が行ったのは、対立候補マイケル・デュカキスが州知事を務めるマサチューセッツ州に存在した、殺人犯をも含む受刑者の一時帰郷制度を批判するものだった。一時帰郷中の受刑者が殺人やレイプをしたことを取り上げ、有権者の恐怖心を煽り、「マサチューセッツの奇跡」を遂げたデュカキスを失速させた。

 それに対して、プラウフらが編み出したのは、ユーモアを交えた手法だ。例えば12年の大統領選で放映されたテレビCMは、歌うことが好きで知られる共和党候補ミット・ロムニーの歌声が、ロムニーを批判する文言のバックで流れるものだった。結果的にこれが好感を持って受け入れられた。選挙戦の際には、このような新しいアイデアを打ち出せる参謀が求められる。

 翻ってトランプはどうか。3月15日にフロリダ州で勝利し、主流派の支持を得ていたルビオを撤退に追いこんだトランプだが、その後のオハイオ州やユタ州では敗北が続いた。この結果、トランプ包囲網が築かれ、トランプは代議員獲得と決戦投票準備の〝二面戦争〟を強いられた。ポール・マナフォートの起用はこの頃とみられる。

 マナフォートは76年の予備選挙でジェラルド・フォード陣営の決戦投票における勝利を導いた、ベテラン政治コンサルタントとして知られる。トランプは、選挙対策本部長を務めていたコーリー・ルワンドウスキに代わり、決戦投票に向けた対応担当としてマナフォートを迎えた。それだけでなく、共和党主流派との交渉役かつ緩衝材としても、マナフォートは自身よりも若く経験に乏しい共和党幹部らの抑え込みに力を発揮した。

写真はイメージです(moodboard)

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