米国の政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス」が5月13~19日に集計した主要世論調査の平均値で、トランプの支持率が43・4%に達し、初めてクリントンを0・2ポイント差で上回ったと報道された。
筆者は専門分野とする異文化間コミュニケーション論の研究のため、2008年、12年にバラク・オバマ陣営で活動したのに続き、昨年8月からクリントン陣営の選挙対策事務所に入り、全米9州、2065軒に戸別訪問員として訪れた。その中で感じたのは、8月時点で既に無党派層内にトランプ支持が広まりつつあったということだ。
(JOE RAEDLE/GETTYIMAGES)
クリントンとトランプの支持率が拮抗している背景には、インサイダー(職業政治家)への不満が募る中、自身がエスタブリッシュメント(既得権者)であることや、メール問題で不信感を持たれたことがある。さらに戦略面でも、選挙対策として効果的な「アイデア」を示せる選挙参謀がおらず、有効な対策を打てなかったのも大きい。
08年の予備選挙で、クリントンは選挙対策本部長に子どもの世話役の女性を据えた。彼女は00年、06年の上院議員選でも選挙対策本部長を務め、クリントンとの個人的な信頼関係もあって起用に至った。しかし、08年の際には彼女と戦略担当者の意見が衝突して陣営内は機能不全に陥った。
この教訓から今回選挙対策委員長に起用されたのが、ジョン・ポデスタ。ビル・クリントン時代の大統領首席補佐官を務め、オバマ政権でも環境問題を担当した人物だ。経験豊富なポデスタに、クリントンが期待したのは、陣営を統率する役割だった。
オバマフィーバーの立役者
しかし、選挙参謀に必要なのは「統率力」より「アイデア」だ。筆者がそれを感じたのは、08年にオバマ陣営にいた際、参謀を務めていた政治コンサルタントのデイヴィッド・プラウフとデイヴィッド・アクセルロッドの活躍を目の当たりにしたためだ。