しかし、である。SEIYUで騒ぐ青学生は本当にリア充なのだろうか。騒いだ場所は会員制飲食店の一室でもなければ、メンバーの親が有する別荘でもない。街中のスーパーだ(だからこそ炎上したわけだが)。そして彼らがやったことは、シャンパンを空けたわけでも、高級車で走り回ったわけでもないのだ。一銭もかからない、何も持たずにできる「サンバゲーム」。ぴっぴっぴぴ、ぴっぴーぴぴっぴ。若者の貧困が問題となって久しいが、あまりにも悲しすぎる。嫉妬して叩く大人がもしバブル時代に青春を過ごしたことがあるのなら、キーボードに怒りを乗せるのではなく、どうかこの「しょぼさ」を笑ってやってくれないか。たぶん、そのほうがやつらの胸に刺さるから。
そしてさらに思う。本当のリア充は、これみよがしに街中で騒いだりしない。私は十数年前の学生時代、複数の居酒屋でアルバイトをしていたことがあるが、そこで顰蹙を買うほど騒ぐ学生というのは、たいてい本物のリア充のファッションを頑張って真似ようとしたような中途半端な風貌だった。要するに彼らは中途半端でダサかった。そう、何にもしなくても目立ってしまう人たちは、自分から目立つ行動をしないのだ。騒いで目立とうとするのは、それなりのコンプレックスがあるからだ。騒ぎ方をこれまで誰からも教えてもらえなかった非リア充だからこそ騒ぐ、ということでもある。
騒いだ若者を「リア充」と認定してしまえば、リア充でありたい若者はバカ騒ぎを繰り返す。そうではない。「ぴっぴっぴぴ、ぴっぴーぴぴっぴ」と深夜のスーパーで歌い踊らなければならない集団は、そうしなければ自分が誰かとつながっていることを確認できない、ただのさみしい人たちなのだ。決して彼らに嫉妬してはいけない。そのことを、かつてコンプレックスまみれの学生生活を過ごした者として、一言申し上げておきたい。
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