世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年6月28日

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 YPG重視は現実政治そのもので、時には矛盾もある。クルドの女性の民兵の司令官は、いつかクルドの自治区をつくるために戦っていると言い、「シリア民主軍」のアラブの司令官は、シリアという国のために戦っていると言う。

 この戦略の暗黙の主題は、今はISを打ち破り、シリアの将来については後で心配する、ということである。

出 典:David Ignatius ‘The new coalition to destroy the Islamic State’(Washington Post, May 22, 2016)
https://www.washingtonpost.com/opinions/the-new-coalition-to-destroy-the-islamic-state/2016/05/22/54d9b466-2036-11e6-aa84-42391ba52c91_story.html

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政治的考慮は後回し

 米国は、シリアでのISとの戦いでYPGに頼っていますが、おそらく、それ以外に現実的選択肢はないのでしょう。

 イグネイシャスは、YPGを重視するのは、現実政治そのものであると言っていますが、これは軍事作戦であり、シリアの将来をどうするかという政治的考慮は後回しであると言います。

 シリアの将来については、米国とロシアが国際会議を招集していますが、シリアの将来に関する見通しは全く立っていません。米国とロシアの思惑が異なっているうえに、対IS軍事作戦がYPG主導で進められる場合の政治的影響がどうなるのかという問題もあります。米ロの他に、YPGに反対するトルコ、スンニ派部族を支援するサウジ、シリア政府を支援するイランの政治的意図は異なっていて、シリアの将来についての青写真は描けていない状況です。

 しかし、当面の最優先課題は、ISを打ち負かすという軍事目標であり、米国のシリア戦略が、当面、政治よりは軍事を優先させるというのは現実的選択といえるでしょう。

  
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