2022年9月28日(水)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2016年6月29日

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城山英巳 (しろやま・ひでみ)

北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院 教授

慶應義塾大学文学部卒業後、時事通信社に入社。計10年の北京特派員を経て2020年から現職。ボーン・上田記念国際記者賞受賞。早稲田大学大学院社会科学研究科博士後期課程修了、博士(社会科学)。著書に『天安門ファイル』(中央公論新社)、『マオとミカド』(白水社)など多数。

 これまで香港社会は大きく分けて「親中派」と「民主派」の世界だった。民主派は、一国二制度の下で香港の民主主義や自由は守られると信じてきており、主眼は中国の民主化要求だった。しかし香港独立を求める若者らからすれば、天安門事件は確実に風化しており、香港の民主主義が危機に瀕している。こうした中で、27年間やってきた同じやり方はもはや意味はなく、「こんなのん気なことでいいのか」という危機感も強いのだ。

分裂した「天安門事件」集会

 香港ニュースサイト「端伝媒」は、独自取材に基づき、「今年の6月4日は初めて、4つの違った集会に分裂した」と報道している。

 キャンドル集会に毎年参加していた香港中文大学など11大学・専門学校の学生会は今年の6月4日、「六四の意義を見直し、香港の前途を考えよう」をテーマに討論会を開催した。その中で「支連会による集会は形骸化している。『民主中国の建設(を目指す)』という綱領に不満があり、一致して支連会の集会に出席しないこと決定した」と表明し、「中国共産党政権は絶対に信頼できない」と強調した。

 学生会の集会では、香港民族党の主席・陳浩天が出席し、その発言が喝采を浴びた。「香港人が理性的かつ非暴力であろうが、暴力的であろうが、中国共産党は解放軍を出動させ鎮圧できる」。今年3月に設立された香港民族党は、中国共産党による植民状態から抜け出し、独立かつ自由な「香港共和国」を創設するというのが目的で、暴力抗争も辞さないという過激路線を売りにしている。

「香港独立派」「本土派」の台頭

 一方、香港大学の学生会は昨年の6月4日に続き、支連会の集会とは袂を分かった。「香港人の前途はどこに」をテーマに今年も独自の集会を開き、約1000人が出席した。香港民族党と同様に過激な独立派と知られる「本土民主前線」の梁天琦も参加した。「香港こそ本土」という「本土派」の代表格だ。香港大学哲学系の学生である25歳の梁は、16年1月の立法会の補選に出馬し、落選したが、「民主派」「親中派」に続き、第3位の票を獲得し、「本土派」の勢いを見せつけた。

 今年の春節に九竜地区の繁華街・旺角で起こった警察との衝突事件を起こしたのも本土民主前線だった。中国共産党体制と対抗し、香港独立のためには暴力手段も辞さない手法に対し、一部の若者の熱烈な支持を集めつつあるのも事実だ。

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