2022年8月18日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年10月7日

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城山英巳 (しろやま・ひでみ)

北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院 教授

慶應義塾大学文学部卒業後、時事通信社に入社。計10年の北京特派員を経て2020年から現職。ボーン・上田記念国際記者賞受賞。早稲田大学大学院社会科学研究科博士後期課程修了、博士(社会科学)。著書に『天安門ファイル』(中央公論新社)、『マオとミカド』(白水社)など多数。

 中国でウイグル族が直面している現実への理解と問題解決を訴え、ウイグル族と漢族の間の「橋渡し」役を務めようとして国家分裂罪に問われた中央民族大学(北京)の著名なウイグル族経済学者、イリハム・トフティ氏に対し、新疆ウイグル自治区ウルムチ市中級人民法院(地裁)は9月23日、無期懲役判決を言い渡した。

 裁判所は判決文で罪状の一部をこう指摘した。「海外メディアの取材を受け、悪意を持って新疆問題・事件を煽り立てた」。海外メディアの取材を受けたことまで罪に問われるのも異例だが、言論弾圧で無期懲役判決が出されるのも極めて異例だ。しかも「穏健派」とされたイリハム氏に対する裁判の結果には、中国におけるウイグル問題の複雑な現実が潜んでいる。

 「どんな結果になっても受け入れる。当局の政策に批判的な声を上げた知識人は重い代価を払わなければならない。裁判を通じて新疆の法制化を望んでいる」。新疆ウイグル自治区で「テロ」とみられる民族対立が多発する中、イリハム氏は一体、何を伝えようとしたのか。

政府批判知識人の「声」を消す

 イリハム氏の弁護人を務める著名人権派弁護士の李方平氏は、判決言い渡し前日の9月22日、筆者の取材に「無期懲役判決も排除できない」と言い切った。「新疆問題は複雑だ。イリハム氏の主張する声は(彼の逮捕で国内のどこにも)もはやなくなった。しかし問題はまだ存在している。だから(政府の新疆政策を)批判する声がなくなったらどうなるのか」。こう続けた。

 9月17~18日の初公判直後に接見した李方平、劉暁原両弁護士は、ウルムチ市拘置所の接見室に足かせをはめられて現れたイリハム氏を見て、「無期懲役判決」という最悪の結果を予測した。

 判決で「国家分裂罪」の舞台の1つと指摘されたのが、イリハム氏が06年に立ち上げたインターネットサイト「ウイグルオンライン」。同氏は裁判でも、「ウイグル族・漢族間の誤解を取り除き、交流を促進する場にするためだ」と説明している。劉暁原氏はこう指摘した。

 「イリハム氏が(06年に)サイトを立ち上げ、こんなに長期間が経っている。北京の警察はそれを知っていたが、捕まえなかった。新疆の警察が彼を捕まえたのは、新疆社会などで発生している暴力テロ案件と関わっている。彼らは、知識人の発する声を封じ込めたいと考えた」

ウイグル族経済学者 イリハム・トフティ氏はなぜ逮捕されたのか (写真:The New York Times/アフロ)

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