「いつになったら学習するのか」
ISはラマダン前から世界中でテロを激化。大規模なものだけでも、6月の米フロリダ州オーランドの米史上最悪の銃撃事件、トルコ・イスタンブール空港テロ、そして日本人7人が犠牲になったバングラデシュ・ダッカの飲食店襲撃、300人が死亡したバグダッドの自爆テロなどと相次いだ。
こうしたISのテロ続発は本拠のあるシリアとイラクでの戦況が米主導の有志連合やロシアの空爆強化で劣勢になり、追い込まれている背景がある。「ISにとって報復の手段は海外テロしかなくなっている。軍事的に追い詰められれば、追い詰められるほど、海外でのテロが激化する」(テロ専門家)という関係になっている。
しかもISはこのところ、滅びを自覚した“開き直り”の自暴自棄ともいえる姿勢を急激に見せ始めているのが恐い。シリアとイラクの本部組織の崩壊の可能性を率直に認めることで、世界各地へのIS思想の拡散を狙い、地元でのテロを促しているように見える。
ISのアラビア語のニューズレター「アル・ナバ」は最近の記事で「たとえ支配する都市のすべてを“十字軍”に失ったとしても、われわれは存続し続ける」として組織が壊滅する可能性を認めながら、IS思想が不滅である点を強調。アドナニ自身も同様の考え方を示して地元でのテロを激化させるよう呼び掛けている。
ニースのテロについては、米国のオバマ大統領も強く非難する声明を出したが、注目すべきは共和党の大統領候補を確定させているドナルド・トランプ氏の発言だ。
“イスラム教徒の入国拒否”などの発言で物議を醸したトランプ氏だが、今回も「フランスのニースで恐ろしいテロが起きた。われわれはいつになったら学習するのか。状況は悪くなる一方だ」とツイートした。テロが起きるたびに、トランプ氏の支持率が上がる現象は逆に、テロに有効な対策がないことを示している。
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