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世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年7月26日

 前NATO欧州連合軍最高司令官のブリードラブが、フォーリンアフェアーズ誌7-8月号に、ロシアを主敵と認定、冷戦の復活を宣言するような論文を寄稿しています。要旨、以下の通り。

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冷戦の復活を宣言

 2013年、自分(ブリードラブ)がNATO司令官に就任した時は、NATO自身にとって特定の脅威は存在しておらず、アフガニスタン等域外での活動が主になっていた。しかし、その後の3年間は、ロシアの脅威、中東と北アフリカの不安定が問題となった。これら問題の広がりと複雑さは、第二次世界大戦以来、最大のものである。

 1991年のソ連崩壊後NATOは兵力を縮小し、主としてバルカンの騒動に対処、9・11テロ以降はアフガニスタン、リビアへの対処に注力した。それに対応して、NATOは軍編成も小規模な機動的編成に変更した。

 しかし、ソ連崩壊後の混乱から復活したロシアは国防費を増額、ウクライナへのガス供給の操作、ジョージアへの侵入等、周辺国に介入し、それら諸国のNATO、EUへの接近を妨げるようになった。ロシアは「大国」としての地位の復活を目指しており、米国とその同盟国、国際秩序の存続を脅かしている。ロシアの兵器の技術水準はNATOに劣っているが、防空能力強化等により、バルト海、黒海、北極、ロシア極東に敵を寄せ付けない地域を作り上げつつある。

 ロシアの動きに対して、NATOは敏速に対抗する力を持たない。冷戦期には欧州に40万いた米軍は現在10万以下になっており、うち3万5000は本国からのローテーション派遣である。これでは、ロシアに既成事実を作らせてしまう。2010年以来の米国防予算削減が米軍の足を引っ張っているし、アジア重視を打ち出していることも、欧州での兵力増強を難しくしている。

 欧州でのNATO加盟国は1990年以来12カ国増えたにもかかわらず、米国以外の加盟国の国防費総計は1990年の3320億ドルから2014年の3030億ドルに減少している。難民問題、テロの激化も、欧州諸国の国防予算を圧迫している。また、脅威認識は域内で異なり、北部欧州諸国がロシアを主要な脅威と見ているのに対して、南部欧州諸国にとっては難民の方が切実な問題である。

 それでもオバマ大統領は2014年、ロシアのウクライナ介入に対抗して「欧州安心供与イニシアティヴ」を発表し、2015年には9.85億ドル、16年には7.89億ドルの予算を追加、2017年には34億ドルの予算を請求している。これにより、有事に米軍を増派するため欧州に兵器を貯蔵しておくこと等が可能になる。そして2014年以来、米軍はポーランド、バルト諸国へのローテーション派兵を行い、地中海と黒海には海兵隊がほぼ常駐している。NATOの欧州諸国もバルト諸国での警戒飛行を展開、また「高度即応統合任務部隊」を設置して、有事即応能力を強化した。司令メカニズムも強化されている。冷戦以来最大の増強だ。

 ロシアが周辺国のEU、NATOへの接近を阻害するのを許すべきではなく、NATO諸国は十分な抑止力を備えるべきである。米国は兵力を増強し、近代化すべきで、欧州諸国も国防負担を拡大しなければならない。欧州配備の米核兵器は重要な要素であり、これを維持し、ロシアに対して誇示しなければならない。米国は、東欧の有事に2、3個の装甲旅団を最低でも2カ月間展開できる兵力と装備を準備しておかねばならない。

 米国とNATOは、ISISとの戦いを続けなければならず、シリア、イラク、リビアでどっちつかずの路線を取るべきではないが、米国とNATOは、この方面では補助的な役割に徹するべきで、主役は中東諸国に演じてもらうべきである。

出典:Philip M. Breedlove,‘NATO's Next Act’(Foreign Affairs, July/August, 2016)
https://www.foreignaffairs.com/articles/europe/2016-06-13/natos-next-act


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