■今回の一冊■
SUPERFREAKONOMICS
筆者Steven D. Levitt & Stephen J. Dubner, 出版Morrow, $29.99
日本でも「ヤバい経済学(FREAKONOMICS)」の邦題で出版したベストセラー経済書の続編だ。タイトルを意訳すれば「超ヤバい経済学」か。2009年10月に出版した直後にニューヨーク・タイムズ紙の週間ベストセラーリストの単行本ノンフィクション部門の2位で初登場、直近のリスト(ウェブ版1月15日付)でも7位につけ、12週連続でベスト10入りしている。
経済書といっても経済統計を扱う無味乾燥な専門書ではない。シカゴの売春婦の値段や、大病院で医者がちゃんと手を洗っている確率、自爆テロリストに共通してみられる金融取引の特徴など、さまざまな社会現象の秘密をインセンティブという観点から経済学的なロジックを駆使して、砕けた語り口で解説する読み物だ。新進気鋭の若手経済学者のスティーブ・レビット氏とジャーナリストのスティーブン・ダブナー氏は、さまざまな経済学者らの手になる調査データを紹介しつつ、素人向けに面白おかしく分析のメスを振るう。
豊富なデータをもとに、世間で一般に常識とされることをひっくり返してみせる点に、本書の最大のおもしろさがある。例えば、地球温暖化について書いた章ではまず、ハイブリッドカーに乗っても地球温暖化の抑止には全く貢献しないと、地球環境に配慮しているつもりの人々を冷やかす。
プリウスよりも牛!?
It is generally believed that cars and trucks and airplanes contribute an ungodly share of greenhouse gases. This has recently led many right-minded people to buy a Prius or other hybrid car. But every time a Prius owner drives to the grocery store, she may be canceling out its emission-reducing benefit, at least if she shops in the meat section.
How so? Because cows―as well as sheep and other cud-chewing animals called ruminants―are wicked polluters. Their exhalation and flatulence and belching and manure emit methane, which by one common measure is about twenty-five times more potent as a greenhouse gas than the carbon dioxide released by cars (and, by the way, humans). The world's ruminants are responsible for about 50 percent more greenhouse gas than the entire transportation sector. (p167)
「温室効果ガスのかなりの部分は、乗用車やトラック、飛行機によって産み出されていると一般には信じられている。このため近年は誠実な人々がプリウスなどのハイブリッド車を買うようになった。しかし、プリウスにのってスーパーに買い物に行くたびに、排出量を減らす努力は台無しになっているかもしれないのだ。少なくとも、食肉売り場で買い物をする限りは。