2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2016年8月13日

 韓国のランキング1、2位の選手、中国の大会優勝者など、日本も含めアジア7カ国のトップレベルのパイロットが結集したアジアカップ。国家戦略特区でドローン特区の秋田県仙北市が開催地に名乗りを上げ、内閣府地方創生推進事務局が特別後援、外務省、国交省、経産省などが後援した。

開会式に臨む仙北市長ら

高かった海外の壁

 こうして鳴り物入りで挙行された大会だが、ふたを開けてみると目立ったのは海外勢の活躍ぶりだった。外国選手が競技に参加した3種目の入賞者を以下に並べてみる。

【マスタークラス】 優勝 キム・ヒョンソプ(韓国)、準優勝 リ・クンファン(中国)、3位 リ・チャンハン(韓国)
【フリースタイルクラス(自由飛行)】 優勝 リ・クンファン(中国)、準優勝 矢田篤幹(日本)、3位 アクセル・マリオ・クリストファー(インドネシア)
【コネックスプロサイトアストロクラス(次世代デジタルビデオトランスミッターを使用した世界初のレース)】キム・ヒョンソプ(韓国)

 日本人で入賞したのはフリースタイルの矢田選手のみで、海外勢の優位は明らか。「国内のパイロットも伸びてきているが、まだ海外とは実力差がある」大会の実行委員の1人で、ドローン競技大会の企画・運営会社「FPV Robotics」の駒形政樹社長はこう話す。

駒形社長(左端)、マスタークラス優勝のキム選手(右から3人目)、同3位のリ・チャンハン選手(同2人目)と韓国チームのメンバー

 「日本ではFPVを使った競技の歴史が浅く、昨年11月に国内初のレースが開かれたばかり。それに対して、韓国、中国ではレースが始まって2、3年たっており、選手の出場回数も多い」

 歴史の浅さは競技人口にも直結しており、海外と国内を比べると「選手層の厚さの違いは圧倒的」(駒形社長)だという。競技人口の多い韓国にいたっては、今年、ドローンのアマチュアリーグを立ち上げた。ただし、国内の競技人口が海外に比べて伸び悩んでいる背景にあるのは、競技の開始時期の遅れだけではない。ドローンをめぐる規制の厳しさも競技参入の足かせになっているのだ。

免許取得、省庁への申請など高いハードル

 ドローンの好きな日本人が実際にFPVドローンレースに出場するには、数々の障壁がある。ドローンは映像の送信時に5.8GHz(ギガヘルツ)帯の電波を使用するため、まずアマチュア無線の免許を取らなければならない。加えて、映像の送信機の開局申請も必要だ。受検勉強をして免許を取り、開局申請をして初めて競技用ドローンを飛ばす資格がそろうわけだが、実はドローンを手に入れるにも壁がある。ドローンのパーツは基本的に海外のサイトを通して購入することになる上、説明書も英語のため、英語能力は必須と言っていい。

アジアカップが行われた会場

 こうして購入しても、練習場の確保という次なる壁が待ち構えている。競技用ドローンは目視の範囲を超えた飛行をするため、練習場所を探して、国交省に飛行申請をする必要があるのだ。練習場所を見つけるのも一苦労で、国内のパイロットは小さな倉庫を練習用に借り上げたり、ラジコンヘリを飛ばせる飛行場を使ったりしているという。

 「競技用ドローンを飛ばすにはハードルが五つくらいあって、普及しにくい理由になっていますね」と駒形社長。規制の厳しい国内に比べ、海外では規制自体が緩かったり、ドローンの練習場として使えるエリアが多数あったりと、国内に比べてパイロットを取り巻く環境は恵まれているようだ。


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