2024年12月22日(日)

海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年8月23日

 現地リポートの2回目は、「クリントン陣営のトレーニング(2)」です。
クリントン陣営には、戸別訪問(キャンバシング)のベスト・プラクティス(最高のやり方)に関する台本が存在しています。その台本に基づいて、有給のスタッフとボランティアのリーダーが筆者のような運動員を対象にトレーニングを実施しています。同陣営は、戸別訪問のやり方を「やるべきこと」「やってはならないこと」及び「覚えておくこと」に分類しています。

選挙対策事務所開き(筆者撮影@バージニア州フェアファックス市)

 本稿では、クリントン陣営の戸別訪問のやり方を紹介します。その上で、表現の自由と戸別訪問について考えてみます。

やるべきこと

 まず、戸別訪問で「やるべきこと」から説明しましょう。2012年米大統領選挙におけるオバマ陣営と同様、クリントン陣営もボランティアの運動員に対して、「有権者名簿にリストされている有権者を全員訪問する」ことを強調しています。というのは、ボランティアの中に標的となっている有権者をすべて回らず、やり残してしまう運動員がいるからです。前回の大統領選挙で、リストされた有権者の10%ぐらいしか訪問しなかった運動員がいました。筆者は自分の担当地域に加えて、彼の訪問地域にも赴き有権者の家のドアを叩いて、名簿を仕上げなければなりませんでした。

 次に、当然ですが「好意的な態度で標的となっている有権者に臨む」があります。さらに、「有権者の家のベルを鳴らしてからドアを2回叩く」もルールの一つです。「台本を棒読みせずに、自分の言葉で心から語る」は、効果的なコミュニケーションをとる上で欠かせません。前回の「クリントン陣営のトレーニング(1)」で説明しました「コミットメントカード(約束カード)を回収する」は、クリントン陣営の戸別訪問における最重要課題となっています。

 以上に加えて、正確にデータを収集するように指示が出ています。標的となっている有権者が不在の場合は「NH(Not Home)」、死去は「DC(Deceased)」、スペイン語のみ話すは「SP(Spanish)」、移転は「MV(Moved)」のそれぞれの欄にチェックを入れます。スペイン語のみ話す有権者に対しては、ヒスパニック系の運動員が後日訪問することになっています。11月8日の投票日直前に、移転した有権者の家を訪問しないように、予め把握しておく必要があるのです。


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