2024年4月27日(土)

海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年8月23日

 暗証番号がないと入口のロックを解除できないマンションや番犬がいる場合は「IN(Inaccessible)」、空き家は「VC(Vacant)」の欄に記入します。標的となっている有権者の中には、回答を拒否する有権者も少なくありません。その場合は、「RF(Refused)」の欄にチェックします。運動員は、拒否した有権者の家を再度訪問しませんので、本当に回答を拒んだのか、それとも単に忙しかったのかを慎重に判断しなければなりません。

 クリントン陣営は、コミットメントカードを回収すると共に、12年米大統領選挙及び14年中間選挙で蓄積してきたデータを最新のものにする目的で戸別訪問を実施しています。地上戦におけるデータの量と質の双方において、与党民主党は野党共和党に勝っており、アドバンテージの1つになっています。

やってはならないこと

 戸別訪問ではボランティアの運動員は、「標的となっている有権者の家の中に入ってはいけない」というルールがあります。その理由は明確です。安全性を確保するためです。

 共和党支持者の家の中に入ってしまうと、逆に説得にかかってくるケースもあるからです。仮に、日本で戸別訪問を解禁する場合、賄賂を防止するためにこのルールは極めて重要になるでしょう。

クリントン選対(バージニア州フェアファックス市)

「標的となっている有権者に口実を与えない」も相手とコミュニケーションをとる上で不可欠です。訪問した有権者に「お時間を頂けますか」「お忙しいですか」と質問すると、「今忙しいからダメ」と言われ、クリントン候補を支持しているのかを聞き出せないからです。筆者の経験では、「あなたの票に頼ってもいいですか」と、直接質問を投げかける方が、標的となっている有権者から回答を得る確率が高いです。

 さらに、「1軒の家に長時間留まらない」があります。1軒につき5分以内で有権者の回答を得るように指示が出ています。というのは、1回の戸別訪問で約40軒回らなければならないからです。

 日本人の筆者が違和感を持ったのは、「陣営のパンフレットを郵便受けに入れない」です。米大統領選挙及び中間選挙で陣営のパンフレットを郵便受けに入れる行為は違法になるので、オバマ陣営と同様、クリントン陣営も注意喚起をしています。

 余談になりますが、14年米中間選挙で、バージニア州第11選挙区のジェリー・コノリー下院議員(民主党)は、自らボランティアの運動員に向かってパンフレットの扱いに関して注意を促していました。ボランティアの運動員は、パンフレットをドアないし取手に挟んでいます。筆者は、ドアの前にパンフレットを置くように心がけています。

 以上に加えて、やってはならないことには、「有権者名簿に掲載されている調査質問をやり残さない」「不作法な振る舞いをしない」「否定的な話をしない」「サングラスをかけない」があります。


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