2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年9月2日

 今回の米軍によるリビアにおけるIS拠点への空爆は、時宜を得ていました。ニューヨーク・タイムズ紙は、軍事力使用への消極的な姿勢を表明することが多いですが、今回は、この新しい空爆を容認しています。ISは、シリアとイラクでは支配領域を減らしています。イラクでモスルを失い、シリアでラッカを失えば、自称カリフ国は、支配領域を持たないに等しくなります。それでISは、リビアの拠点構築に注力してきました。

リビア政府の要請に応じた空爆

 しかし、リビアでは、統一政府ができ、それと連携する民兵組織がISとの戦いで成果を収め、ISの支配領域が減ってきています。リビア政府と反IS民兵を支援するための空爆は、ISの車両などを標的にしているようですが、戦場での力関係を変えるのに成功する可能性は高いです。

 リビアの正統政府からの要請に応じた空爆であり、国際法上の問題はありません。ただ、米国の国内法上、どういう場合に武力を行使することを認めるかの、いわゆる武力行使権限法については、議論が錯綜して、なかなか成案が得られていないようです。ニューヨーク・タイムズ紙は、この問題をはっきりさせるべきだとしていますが、正当な主張でしょう。ISに対する武力行使を「9・11」テロに対する法律に依拠して行っていることは、適切とは言えません。

 リビアは600万の人口の国で、石油資源に恵まれ、国民所得も一人当たり1万ドルを超える国家です。その安定化は達成可能な目標であるというのはその通りでしょう。イスラム過激派を追い出すことは、リビア再建にとって最も重要であると思われます。
 

  
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