青野 何でもかんでも制度化して社員を縛っていくことが性悪説に基づいているとしたら、多様な制度を整えて社員に自由を与えていくことは性善説に基づいているといえる。
性悪説に基づき、厳格化することはマネジメント手法として最も簡単だが、その方法論では社員の多様性が損なわれ、画一化が進む。結果としてイノベーションが起きない組織になってしまう。性善説に立って制度を運用していくためには公明正大という「文化的インフラ」が必要だ。
ネット社会の到来で企業はウソをつけない
駒崎 ネット社会の到来で、ウソをつくことや不誠実でいることのコストはかつてないほど高まっていると感じている。たとえば転職サイトなどを見ても、ある会社を辞めた社員が、その会社の社風や制度を誉めている場合がある。これは、中長期的に見ればその会社にとってもプラスになる。
最近、特に大きなウソをついて会社経営を危うくしている事例が出てきている。企業が公明正大であることの合理性に、多くの人がまだ気づいていないのではないか。人材の獲得競争が熾烈さを増す中、「ブラック企業」という烙印を押されることは大打撃になる。
青野 ただ、ホワイト企業であればそれで良いかといえば、必ずしもそうではない。離職率が1%の超優良企業もあるが、社員の出入りがないということは、多様性に欠けるともいえ、それはイノベーションを起こしにくい組織であるともいえる。社員にとって働きやすい企業にする、というだけでは組織のマネジメント手法としては十分とはいえない。
駒崎 社員の多様性を広げ、イノベーションが起きる組織をいかに作れるかが、企業の将来を左右するという青野さんの主張には納得感がある。そのために、女性が活躍しやすい環境を整えることはもちろん、副業を認めたり社員に他流試合を経験させたりすることが重要になるというわけだ。
(写真・山本宏樹)
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