必要な人材像は定まっても、社員自身が自主的に変わろうとしてくれなければ既存の人的資源は活用できない。社員に自主性を持ってもらい、必要な能力を得られるようなプログラムを用意する必要があった。
まず、社員に危機感を持ってほしいと、プログラムへの参加者を募集する際に、各部門と人事で描いた5年後のビジネス、技術戦略のロードマップを見せた。会社が求める技術領域はこれだけ変わると明示したうえで、自主性を重んじるため、あえて研修プログラムへの参加には、5000円の自己負担を求めた。
その代わり人事は、各技術領域で社員が一番話を聞きたい、当時考える限り最高の講師陣を用意した。九州大学の安浦寛人副学長(現在)をはじめ、一人一人直接会って研修の趣旨を話し、講師を引き受けてもらった。
結果、休日開催だったにもかかわらず、プログラムには延べ2000人以上の社員が参加した。社員たち自身が、これから必要となる技術を渇望していたため、講義開始前から講師陣に質問を浴びせ、議論をしかけ、それに講師陣も応えた。研究と実業に従事する双方の応酬で、会場は異様な熱気につつまれた。
人的資源をできるだけ無駄なく活用するポイントは、彼らのようにいかに将来を見通して自ら変化できる人材をつくれるかだ。とあるエンジニアが「最高に刺激的なプログラムでした」と言ってくれたことを今でも鮮明に覚えている。人事冥利につきる嬉しい一言だった。
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