事業には残念ながら寿命がある。既存事業はできるだけ延命させつつ、別の根幹になる事業を創出し、新規事業へ移行しなければ企業活動は続いていかない。
同時にそれは、会社の求める人材が変わっていくことにつながる。日本企業はこれまで雇用を守り、長期に人材を育成することで、会社の競争力を獲得してきた。しかし、それは通用しなくなる。今後はAIやロボットなど、技術の進化のスピードが加速するため更にこの問題の起こる周期は短くなるだろう。こうした環境の変化で経営者はいかに無駄なく人材を活用するか悩んでいる。
人事は経営者に寄り添い、まずは人材のポートフォリオの見直しから始めたい。既存事業が好調なうちに、経営戦略、R&D戦略の各部門と連携し、会社のビジネス戦略、技術戦略のロードマップに沿って、会社全体に人的資源をいかに供給するかの絵を描く。そして、このままだと既存事業に取り残されてしまう人材はどのくらいになるのかをシミュレーションし、それを防ぐための行動を起こしてほしい。
ソニーにいたとき、当時のCTOと相談し、これに挑戦したことがあった。当時、ソニーではアナログからデジタル、ハードからソフトへの大幅な技術変換をしないと、事業が立ち行かなくなることが懸念されていた。必要な人材像はシステムアーキテクトのようにソフトとハードの双方に精通しつつ、半導体、通信ネットワーク、ソフト開発のどれかに強みを持つ人材だった。