2024年7月15日(月)

海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年9月30日

 クリントン候補が自分の弱点であるメール問題について間違いであったと認めると、すかさずトランプ候補は意図的であり「間違いで済むものではない」と切り返したのです。戸別訪問を行うと、トランプ支持者はメール問題に関して、クリントン候補は犯罪者であり刑務所に入るべきだと主張します。前半はトランプ候補が優勢に討論を進めていました。

 ところが、クリントン候補のある一言が流れを変えたのです。

 50分を過ぎたとき、トランプ候補は「私が各州を飛び回っているとき、あなたは家で討論会の準備をしていたんでしょ」と皮肉を込めて語ったのです。この発言にクリントン候補が反応をしたのです。

 「ドナルドは、私がこの討論会の準備をしてきたことを批判したと思う。確かにしてきました」

 こう語ると、クリントン候補はトランプ候補に問いかけたのです。

 「そのほかに何の準備をしてきたか分かりますか」

 続けて、クリントン候補は次のように述べたのです。

 「私は大統領になる準備をしてきました。これは良いことです」

 この回答に会場の有権者の間から拍手が沸き起こったのです。テレビ討論会において、会場の有権者は候補者の発言に対して拍手をすることは禁じられていますが、思わずしてしまったのでしょう。それ以後、クリントン候補は好感度を高めるために笑顔と余裕のある態度をより多く見せるようになったのです。結局、「私は大統領になる準備をしてきました」の一言が、この討論会の「ゲーム・チェンジ」になったのです。

クリントンの非言語コミュニケーション

 トランプ候補は共和・民主両党の候補から気質に問題があると指摘されてきました。同候補は大統領にふさわしい資質を備えておらず、従って「核のボタン」を任せることはできないと批判されているのです。それに対して同候補は「自分の強みは気質である」と反論し、「自分よりもクリントン候補こそが気質に問題を抱えている人物だ」と指摘したのです。クリントン候補は、トランプ候補のこの批判に言葉で返すのではなく、次のような表情と動作を通じてメッセージを発信したのです。

 まず笑みを浮かべました。次に「ウォー!」と驚きの声を出した後、体を揺さぶる動作を5秒ほど繰り返したのです。その動作によって「そんな訳ないでしょ。あなたの気質の方が問題でしょ」という強いメッセージを送ったのです。会場から笑いが起こりました。クリントン候補は、トランプ候補の言語に対して非言語で対応したのです。


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