2024年11月23日(土)

ネルソン・コラム From ワシントンD.C.

2010年2月26日

 日本離れに「傾いている」米国であれば、日米軍事同盟を継続させるためには、自民党が2006年に採択した「計画」――ただし実行には移されなかった――が最善の策だということを鳩山由紀夫首相に説得するために、これだけのエネルギーを費やすはずがないのだ!
(残念なことに、我々は米国の「努力」が「賢明だった」とも「うまくいった」とも言えないけれど、これはまた別問題だ)

 さて、次に北朝鮮はどうだろうか。北朝鮮の問題は、ブッシュ政権下では日米関係における特に「難しい」問題だった。ブッシュ政権は常に日本の拉致 被害者の悲劇に同情的な姿勢を表明しつつ、時に日本の利益に反する行動に出て、「6カ国協議」の枠組みの下で日米双方が受け入れられる「国際的な」決議で はなく、北朝鮮政府との2国間の「合意」を模索したりした。

 オバマ政権は、日本が犠牲になる可能性がある北朝鮮との個別合意を追求するというブッシュ政権の政策を継続しているのだろうか?

 ここでも、現実はその反対だ。米国の政策は今もしっかりと6カ国協議に軸足を置いており、非公式または「実質的」に北朝鮮を核保有国として認める ことに反対する姿勢を貫いている。それも、日本に対する戦略的脅威となりかねないというのが、米国が「強硬路線」を継続する最大の理由だ。

“怒りのオバマ”は間違い 

 米国が日本を離れて中国の方へ「傾いている」のではないということを示す「例」はまだまだたくさん挙げられるが、とりあえずこの議論は終わりにし て、2番目の「誤った、または危険な」議論に移ろう。つまり、オバマ大統領は中国に「怒り」を覚えており、次第に「強硬路線」を強めているという見解である。

 WEDGE Infinityの読者は間違いなく、最近起きた2つの出来事について、中国政府が米国を激しく非難したことを報じる記事を読んだはずだ。1つ目は、総額 60億ドルに上る武器および兵器技術を台湾に売却するという先月の発表。2つ目は、チベット仏教の最高指導者で、オバマ氏と同じノーベル平和賞受賞者であ るダライ・ラマとホワイトハウスで会談した一件だ。

 米国の一部のアナリスト、なかんずく大抵は他より信頼の置ける媒体で、常にその意見が重視される米ニューヨーク・タイムズ紙は、この2つの出来事 はオバマ大統領の「決断」であり、大統領が怒っていて、中国政府との対話において「よりタフになる」または「強硬路線を強める」ことを辞さない意思を「中 国に示す」狙いが込められているとの論陣を張った。

 両方のテーマ(台湾の武器問題とチベット問題)に関する長年の経験から、我々は読者の皆さんに、どちらの主張・仮説も間違っていると断言できる。オバマ大統領が「中国に対する新たなアプローチを決めた」などというのは、全くのデタラメである。

 とはいえ、オバマ大統領がコペンハーゲンの気候変動会議で、胡錦濤国家主席が階級の低い政府関係者を送り込んできたことに非常に失望したのは事実だし、会議の結果――あるいは結果を出せなかったこと――に落胆したことも事実だ。

 また、環境問題で行動しない中国の姿勢や、公式の場での中国人の「無礼な」振る舞いが、オバマ大統領がアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議後に北京で胡国家主席と会談した際に得た感触とは大きく異なると感じていることも事実である。


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