2024年11月23日(土)

ネルソン・コラム From ワシントンD.C.

2010年2月26日

 つまり、軍事的、政治的、経済的なアジアの将来の安定を考えると、米国と日本には、今中国の「台頭」と呼ばれる動きをうまく「マネージする」ことを試みる以外、一切の合理的選択肢が残されていないのである。

 もちろん、ある人の「マネージメント」は別の人の「傾き」に見えるかもしれないので、なぜこの「傾き」の議論が間違っているのかを示す明白な例を挙げよう。

だから、米中「傾き」議論は間違っている

 まずは貿易。「傾き」が日米貿易にマイナスとなる意図的または計画的な態度だと懸念するのであれば、米国の政策が日本を犠牲にして中国を優遇する方向に変化していることを示せないとおかしい。

 例えば、ホワイトハウスが商務省や米国通商代表部(USTR)を通じて、貿易問題で日本企業を提訴する動きを今も促しつつ、中国企業に対する提訴は抑えているといった証拠があるはずだ。しかし、それは事実ではない。

 実際、USTRはむしろ以前よりも積極的に中国企業に対する提訴を促していると言える。これは中国に世界貿易機関(WTO)の基準を満たすよう働 きかけるためで、この問題については、なぜ2010年が既に「難しい」状況になっているのかという今月の議論の一環として後で改めて触れたい。

 さて、では日本円と中国人民元の双方が米ドルに対して「歪んだ水準」になっているという見解は、どうだろうか。大半のエコノミストは、確かにこれはある程度正しいと考えている。

 それでは、米国は中国に優しい対応を取る半面、常に日本に文句を言うことで中国サイドに「傾いている」のだろうか? これもまた事実ではない。現実はその反対だと言っていいだろう。

 次は外交政策。外交については興味深く、重要な題材がそれこそ山のようにあるが、ここでは1つか2つの点に焦点を絞ろう。まず中国は、日本人であ れば誰でも知っているだろう領土権の主張も含め、重要な海底エネルギー資源を「共有」している近隣アジア諸国に対する圧力を恐ろしいほど強めている。

 米国は日本の利益に反して中国側の主張を「優遇」してきたのだろうか? (それを言ったら、日本以外にも、韓国、あるいは台湾、フィリピンの利益を蔑ろにしてきただろうか?)

 現実はその反対である。もっと言えば、とりわけ米国海軍は「海洋の自由」を定めた国際海事法を厳格に執行する姿勢を強め、国際貿易の海路を守ろうとしている。何しろそうした海路の多くが、中国が大げさに主張している海洋領土内に入るからだ。

 一方、米国は日米同盟下で日本に対して負う義務の「説明」の仕方には慎重だったものの、オバマ大統領のスポークスマンたちは中国に対して率直に、 もし中国政府が日本が領土権を主張する島々で主権を確立するために武力を行使すれば、米国は日本の防衛に駆けつけると警告している。

 米国の外交・国防政策が今なおアジアで最も重要な「同盟国」である日本に依存していることを裏づけるとりわけ鮮明な「証拠」は、沖縄・普天間基地の論争が実に劇的に示している。これは先月のWEDGE Infinityのコラムで取り上げたテーマだ。


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