2010年が米中関係にとって「難しい」年になるという話は、今や日常会話の一部となっている。「コンセンサス」となったこの手の見解は――たとえそれが間違っていたとしても――おのずと現実となる嫌いがあり、そのリスクが今、米中関係の観測筋を神経質にさせている。
というのも、「誤った」前提は政策を歪める結果を招きかねない。今月のコラムでは、我々が中国に関する誤った前提の好例と考えているケースを2つ取り上げ、この問題について検証していきたい。
中国のマネージャーになりたいアメリカ
最初の考え方は、米国は中国の方へ「傾き」つつあり、日本の利益に反する方向に向かっているというもの。
2つ目は、コペンハーゲンの気候変動問題国際会議で中国が見せた極めて期待外れの言動以来――あるいは、まさにそうした振る舞いのために――、バ ラク・オバマ米大統領は次第に中国に対し「強硬路線」を取るようになったという見方で、このことは最近の台湾への武器売却発表やホワイトハウスでのダラ イ・ラマとの会談に見て取れるとするものだ。
(ここで、2番目の見解が自明の如く、1番目の見解の「誤りを立証する」ことに留意していただきたい!)
過去数年間にわたり、日本の友人から最も頻繁に聞かれる「中国絡みの質問」は、「米国は中国の方へ『傾き』つつあり、日本から離れていっているのではないか?」という趣旨の質問だ。
WEDGE Infinityの読者は、この質問が「政策を歪めかねない間違った分析や正確でない分析」という今月のテーマにぴったり合致しているという我々の主張を聞いて、安心するかもしれないし、しないかもしれない。
言うまでもなく、見ようによっては日米両政府とも、何年も前から力を尽くして中国の方へ「傾いて」きた――「傾く」という言葉の定義を、「中国が 『大きすぎて潰せない』存在であり、仮に潰れれば我々全員の共通の利益を損ねずには済まないということを認識すること」と定めれば――。
もちろん、我々はここで論点をはっきりさせるために、答えを「膨らませている」。だが、このポイントは、日中や日米、米中等々の貿易の構成と収支を見ているビジネスパーソンであれば誰でも分かるはずだ。
中国との「近代的」な国際関係の起点に戻ってみるといい。日本と米国が1970年代初めに新たな対中関係を築き始めて以来、日米両政府にとっての根本的な大前提をじっくり観察すると、そこに絶対的な一致が見えてくる。