2024年7月20日(土)

ネルソン・コラム From ワシントンD.C.

2010年2月26日

 その代わり、「オバマ・パッケージ」に含まれた武器は、対潜水艦やミサイル迎撃の武器が中心だった。中国側がこの類の武器を台湾海峡沿いに大量に配備していることを認めてのことである。

 台湾への武器売却についてまとめておこう。オバマ政権の関係者らは内々に、売却発表のタイミングは慎重に計算されたものだと見なせると指摘する。 つまり、重要なAPECサミットの後だが、今年予定されている重要な米中会談までには十分時間があり、中国政府が落ち着きを取り戻し、米中関係の「マネー ジメント」が賢明な軌道にとどまることが期待できるというわけだ。

 胡国家主席がオバマ大統領の自制を理解しているかどうかは定かでない。それを試す最初の「テスト」は、胡国家主席が4月にワシントンで開催される核実験禁止条約に関するサミットに出席するかどうか、だ。

 ダライ・ラマの訪問についても、やはりオバマ大統領の決断は「会談するか否か」ではなく「いつ会談するか」であり、大統領は胡国家主席に対し、先にブッシュ親子やクリントン大統領がそうしたように、会談はいずれ実現すると伝えていた。

 そのうえオバマ大統領は様々な演出を凝らし、ダライ・ラマを歓迎するのは宗教的指導者(そしてノーベル平和賞受賞者)としてであって、亡命中の国 家元首は当然のこと、政治的指導者として迎えるわけではないと言ったのは本心だったということが、遠まわしながらも正真正銘の「シグナル」として中国に伝 わるようにした。

 会談が行われたのは確かにホワイトハウスだったが、場所はオーバルオフィス(大統領執務室)ではなかった。国家元首、あるいは外国の大物政治指導者であれば誰もが米国大統領と会い、写真を撮られたいと思う部屋は避けたのである。

今回も、公平な議論のための一言を

 さて、オバマ大統領がブッシュ前大統領、そしてクリントン元大統領と同じように、チベットの政治、経済情勢、人権問題に対する中国政府の対応の過 ちに基本的に嫌気を差しているのは紛れもない事実だ。そして、オバマ大統領はやはり前任者たちと同じく、一度としてそのことを――丁寧に――口にすること を憚ったこともない。

 オバマ大統領は知っているのである。米国がチベットの政治的独立の大義を容認する姿勢を示唆するようなことを言おうものなら、米中関係を危険にさらすのみならず、チベット市民の生活を一層苦しいものにするということを。

 言い換えれば、これは米国政府が台湾市民に対して抱いたのと同じ懸念だ。最後のポイントをはっきりさせるために、もう一度振り返っておく。ブッ シュ前大統領が台湾へのF16戦闘機売却を踏みとどまり、台湾が2001~02年にオファーがあった武器の購入に踏み切ることを熱心に勧めなかった理由 は、陳水扁氏率いる独立派政権と民主進歩党(DPP)に対して根本的な不信感を抱くようになったからだ。

 台湾とチベットに関するこれまでの簡単な議論から、オバマ大統領の最近の行動が中国に対する怒りの反映であるという主張は無論のこと、両問題につ いてオバマ大統領が米国の政策を「変えた」と主張する言い分がどれだけ間違っているか、WEDGE Infinityの読者が理解してくれることを期待する。

 もしかしたら来月のコラムでは、通貨の問題について詳細に検証していくべきかもしれない。というのも、米財務省は法令によって4月15日までに、どの国の通貨がドルに対して「歪んだ水準」にあるかを示す報告書を議会に提出しなければならないからだ。

 そこには中国も含まれる――そして日本も!

  *次回更新予定日は、3月26日(金)です。

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