海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年11月8日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

クリントンの戦略

 他方、クリントン候補はどのような戦略をとっているのでしょうか。2012年米大統領選挙でオバマ大統領が獲得しました選挙人332を基準にしますと、トランプ候補にオハイオ州、フロリダ州、アイオワ州及びネバダ州を取られた場合、貯金が273まで減ってしまいます。同候補はニューハンプシャー州まで落とすと、貯金が269になり過半数の270を割ってしまいます。両候補の獲得選挙人が「269対269」になった場合、下院が大統領を、上院が副大統領を選びます。

 激戦州においてクリントン候補はかなり偏った訪問をしています。フロリダ州、ペンシルベニア州、オハイオ州及びノースカロライナ州の4州に集中しているのです。中でも最も訪問回数の多い州はフロリダ州です。というのは、クリントン候補は現在リードをしているペンシルべニア州に加えて、接戦となっているフロリダ州を抑えれば、トランプ候補の3つのルートを切ることができると判断したからです。

最終演説の州

 クリントン候補は、最後の演説をノースカロライナ州で行います。同州は2008年米大統領選挙でオバマ大統領が1ポイント以下でジョン・マケイン上院議員(共和党・アリゾナ州)を破り、12年は約2ポイント差でロムニー候補に敗れた州です。現在、同州ではトランプ候補が1.4ポイントリードを奪っていますが射程距離にあり、ここでの勝利がかなりのダメージを与えるとクリントン候補は判断したのでしょう。

 一方、トランプ候補は最終演説の州にニューハンプシャーを選択しました。上で説明しましたように同州は過半数270達成のための戦略的な州の一つですが、それ以上の理由が存在しています。

 同候補は、2015年6月16日に出馬すると泡沫候補だと揶揄されました。共和党候補指名争いにおいて初戦のアイオワ州でテッド・クルーズ上院議員(共和党・テキサス州)に敗れたトランプ候補でしたが、次のニューハンプシャー州で大勝したのです。そこから南部サウスカロライナ州及び西部ネバダ州を制して、トランプ旋風が勢いを増し共和党候補の本命となっていったのです。同候補は、演説の中で指名争いを振り返ると、必ずニューハンプシャー州での勝利に触れます。

 今回の米大統領選挙ではトランプ候補は明らかに人種及び民族間の憎悪を煽り、分断をさらに深化させました。最後の演説でクリントン候補は、英語の「トランプ」が持つ「勝つ」という意味を用いて「愛は憎悪に勝つ」と言って締めくくるでしょう。それに対して、トランプ候補は予備選挙から訴えてきたスローガン「米国を再び偉大な国に戻す」で最終演説を終えることになるでしょう。

 さて、ジェームズ・コーミー連邦捜査局(FBI)長官が訴追をしないと改めて表明し、これが2016年米大統領選挙の最後のオクトーバーサプライズになりました。これにより、再び選挙の流れが変わり、クリントン候補が勝利に近づいたと筆者はみています。

  
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