③ 母乳哺育が可能か
確実に入園できるよう、正社員でも育児休業を前倒しして0歳児クラスから預けるケースが目立っている。育児休業の取得が事実上困難な非正社員や、育児休業制度の対象外となる自営業はなおさら生後数か月のうちに保育園に預ける必要性が増す。
そうしたなか、0歳児で気になるのは、離乳食の開始前から預ける場合の母乳哺育について。保育園によっては「冷凍母乳は扱いません」「冷凍母乳が余るほどもってくることができれば母乳でもいいけど、多めに持ってくることができなければ粉ミルクを足すことはしないからミルクだけにして」「1歳で卒乳してください」と強要するなどと、まるで母乳を門前払いのことが少なくない。しかし、そもそも、預かる側の保育園も預ける側の母親も、保育園が母乳を「許可する」ように受けとっているが、これは実は間違いである。
児童福祉法に基づく「保育所保育指針」や食育推進基本法に基づく「食育推進基本計画」の「保育所における食育に関する指針」では、冷凍母乳による栄養法の配慮を行い、受け入れ体制を整え母乳育児の継続を支援できるように配慮するよう記されており、それが周知徹底されていない。
職場復帰すれば搾乳する時間が限られ、さらにストレスで分泌が落ちるなど、“余るほど”母乳を搾乳して準備することは事実上、困難になる。それでも、母乳のメリットを考えて、母乳哺育を望む親の希望を無視するような保育園は、保育のベースとなる「一人ひとりに寄り添う」ことが置き去りにされていると言っていいだろう。そもそも園側は委託費のなかで粉ミルクの費用を受け取っているため、母乳が足りないからといって粉ミルクで補わないことは理にかなわない。
冷凍母乳の保管期間も「日々、搾乳したばかりの母乳を持参」「3日以内」「2週間以内」「1か月以内」などの指示がまちまちだ。拙著『ルポ保育崩壊』(2015年、岩波新書)でも記したが、母乳哺育の専門家である昭和大学病院小児科の滝元宏医師によれば、搾乳した母乳の保存期間は、新鮮母乳は室温25℃で4時間未満、冷蔵庫(4℃)で8日未満、クーラーボックス(15℃)で24時間未満、2ドア冷蔵庫の冷凍庫(マイナス20℃)で12か月未満、解凍母乳(4℃)で24時間未満とされている。もちろん、時間が経つにつれ栄養素は劣化するため、早いうちに使用するほうが良いが、きちんと専用パックに入れて保管して使う限りは、数か月のスパンであれば使用できる。こうした保管期間についても、事前に確かめることが母乳育児を続けるポイントにもなる。
④ 衣類などの貸し出しはあるか
うっかりした忘れ物は誰にでもあること。そうした場合に、保育園で貸し出しをしてくれるかどうか、自治体や園長の考え方によって異なっている。「忘れ物は親の責任」というのは正論ではあるが、“親教育”を強調するあまり、忘れ物をした子どもが皆と一緒に遊ばせてもらえないなど、子どもが悲しい思いをしているケースもある。
都内のある民間保育園では「園長の理解がなく、貸し出しの衣服がない。現場の保育士が“これでは子どもが可哀そう”と言って、自分たちで衣服を集めた」という例も。ある公立保育園では「登園時、保育園の玄関先で保育士の目の前でウンチをした2歳の子がいた。親がおしりふきを忘れたことに気づくと、保育士が“貸し出しはないので取りに帰ってください”と言われ冷たさしか感じなかった」という“徹底ぶり”だ。
プールの時期、タオルや水着、水泳帽子など何か1つでも親が忘れてしまえば、その子が元気いっぱいでプールを楽しみに登園していてもプールに入れてもらえず悲しい思いをしている例もある。これでは「忘れたから貸してあげる」「貸してくれて、ありがとう」と、助け合う精神を学ぶのではなく、「忘れたのが悪い」と子どもにまで自己責任を押し付けるような保育となってしまい、乳幼児期から懲罰的な感覚のなかで育つ危険がある。保護者と保育園がともに支え合い、助け合い、育ち合うという精神があるかどうかが、忘れ物の対応で伺える。