『世界一子どもを育てやすい国にしよう』(ウェッジ)の出版を記念し、ライフネット生命会長の出口治明と、病児保育や小規模保育、障害児保育等の社会問題を解決する認定NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹さんによる出版記念トークショーを開催しました。仕事と子育てを両立できる働きやすい労働環境をどのようにしたら実現できる? 一人ひとりができることって何だろう。年の差30歳の2人が語り合ったトークショーの模様をお伝えします。
※本記事は、ライフネットジャーナル オンライン様のご厚意により、同ウェブサイト掲載の記事を転載させていただいたものです(元記事はこちら)。
ゲームの前提が変わった、
働き方やライフスタイルを変えよう
駒崎:まず歴史に詳しい出口さんにお尋ねします。なぜ日本では少子高齢化現象が起きているんでしょう? 歴史的に見てどうなんですか?
出口:バビロンの時代から、楽しめる場所と仕事をする場所がたくさんある大都市は子どもが少ない。でも、昔は国境がないので、一旗あげようと山から人が降りてきて都市に住みついて子どもを生んでいた。だから少子高齢化は起こらなかったんです。
駒崎:なるほど。国家というものがあるから少子化になるんですね。でも、日本は働く女性の待遇がまだ満足な状態ではありません、しかも技能実習生のような外国人に差別的な制度が生まれてしまう国です。男女の賃金格差を是正しないまま外国人を受け入れることはできないですよね。
出口:おっしゃる通りです。夫婦同姓の強制について日本は国連の女子差別撤廃委員会から複数回も勧告を受けていますし、女性の地位は世界145か国中、101番目(世界経済フォーラム2015年版「ジェンダー・ギャップ指数」)。GDPは世界で3番目か4番目の国ではあるんですが、歪んだところも多いですね。
駒崎:正直言って、年長世代は何をやってきたのかと思います(笑)。
出口:僕も年長者ですが(笑)、戦後の日本は立派な工場を作り、労働者を長時間働かせて、工場で作ったモノを輸出して高度経済成長を実現しました。工場では重いモノを運んだりしますから、男性の方が向いている。男性が長時間労働すると、家では「飯・風呂・寝る」だけですから、女性は家にいた方が効率がいい。そこで、出来上がったのが三号被保険者とか配偶者控除といった「女性は専業主婦でいた方がいい」というシステムです。20世紀の後半はそれでうまく回っていました。
駒崎:それが成功モデルで合理的だった。でも、もうそんな時代じゃない。ゲームの前提が変わったからには、早く働き方やライフスタイルも変えないといけません。でも、なかなか変わりません……。
出口:日本は90年代から労働時間はずっと年間平均1700時間ぐらいで変わっていないんですね。ところが、ヨーロッパは年間平均1500時間労働で、夏休みは1か月。2016年予測の経済成長率はアメリカが2.2%、EUは1.6%、日本は0.3%。ゲームのルールが野球からサッカーに変わったのに、上の世代はいまだにバットを持ってボールを待っている(笑)。
駒崎:0.3%ってショッキングな数字です。イギリスはEU脱退で大変だねと言っていたら、自分たちの方がずっと大変だ(笑)。