2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2016年11月29日

 現在、日本高血圧学会の高血圧治療ガイドラインでは、診察室血圧と家庭血圧に差がある場合には、家庭血圧を優先することが定められている。医療現場よりも、家庭での測定が優先されるほど、家庭での血圧測定が定着してきた。

 そして、一日に何度も血圧を測ることができるようになったことで、夜間や早朝の高血圧や、急激な血圧変動が、脳・心血管疾患の発症リスクを高めることが、医学的にも解明している。
このように、オムロンヘルスケアが提案してきた家庭用血圧計の普及によって、新たなデータを収集することが可能になり、その結果として、医療そのものが変化してきたのだ。

連続血圧測定技術を世界で初めて開発

オムロンヘルスケアが発表した世界初の連続血圧測定を実現した血圧計

 オムロンヘルスケアは、2016年4月に、連続血圧測定技術を世界で初めて開発したことを発表。2017年を目標に、臨床研究用に血圧計を製品化することになる。これも医療を変え、イベントゼロを実現するためには重要な一歩になる。

 心臓は1日に約10万回程度拍動し、1拍ごとに血圧は変動する。

 だが、家庭用血圧計の多くで採用されているオシロメトリック法による血圧測定方式は、カフ(腕帯)で上腕や手首の血管全体を圧迫し、血流を一時的に止める必要があるため、負荷がかかり、連続して血圧を測ることは不可能だった。

 開発した血圧計では、トノメトリ法と呼ばれる仕組みを使い、手首の体表近くにある橈骨(とうこつ)動脈に圧力センサーを平らに押し当てて、1拍ごとの血圧を測定。ここには、オムロンのコアコンピタンスである半導体技術、MEMS(微細加工技術)、集積回路技術を活用しており、1列あたり10ミリメートルの幅に46個の素子を並べ、それを2列で構成した独自の圧力センサーの開発によって、連続計測を実現している。

 これまでの日間変動の測定から、1拍ごとの血圧を連続して測定できるようになることで、医療は大きく進化することになる。

 すでに、プロトタイプを活用して、夜間睡眠中に、連続血圧測定を行う臨床研究がスタートしており、8人の被験者を対象にデータを収集したところ、これまで捉えることができなかった急激な血圧変動を確認。新たなパターンや頻度を把握することができたという。

 例えば、睡眠時の無呼吸状態には100を切る血圧であったものが、そこからいびきをかき始めると、最大で血圧が190まで上昇するという結果が分かった。睡眠中にも急激な血圧変化が見られていることが確認できたのだ。一拍ごとの血圧変動情報を取得することによって、初めてわかった結果であり、イベントに大きく影響する血圧変動を捉え、患者一人一人が抱えるリスクを軽減できる医療へと進歩する期待が高まる。


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