Wedge REPORT

2016年11月29日

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大河原克行 (おおかわら・かつゆき)

ジャーナリスト

電機、IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を行う。『ソニースピリットはよみがえるか』(日経BP社)など。

オムロンコネクト

OMRON connectのホーム画面。直感的な操作で最新のバイタルデータを確認することができる

 こうしたイベントゼロへの取り組みの新たな一歩として、同社が2016年11月1日から、日本で開始したのが、「OMRON connect(オムロンコネクト)」である。

 オムロンコネクトは、iPhoneやAndroid搭載スマートフォンで利用できるオムロンヘルスケアが提供する無償アプリで、同社のオムロンコネクト対応血圧計で測定したデータを、Bluetoothを利用して転送。測定結果の数値をスマホの画面で確認することができるほか、データの推移をグラフでチェックすることができる。

 ローカルのデバイスでデータを管理することもできるため、個人情報の保護にも適しており、会員登録無しに利用を開始できる手軽さもある。また、同じ血圧計を自宅と単身赴任先に別々に設置していても、一人の情報としてデータを管理。血圧計によっては最大4人までのデータをそれぞれのアプリで管理できる。家族全員が、個別にデータを管理し、確認することができる。直感的な操作で、データ転送ができ、最新のバイタルデータをチェックできるのが特徴だ。

 オムロンコネクトは、すでに、2016年4月から、台湾と中国でサービスを開始しており、6月にはオーストラリアで、8月には欧州、9月にはシンガポールやタイなどでサービスをスタート。日本では、同サービスに対応する血圧計として上腕式血圧計の「HEM-7511T」など4機種、手首式血圧計の「HEM-6324T」など2機種を、11月1日から発売した。今後は、活動量計や体重体組成計などにも同サービス対応製品を用意。体重、体脂肪率、歩数なども毎日測定できるようにするという。先に触れた連続血圧測定技術を搭載した血圧計も、家庭向けに製品化されれば、このサービスに連動することになろう。

OMRON connectと連携するcuron。インターネットを通じて医師の診療を受けられるスマホ診療プラットフォーム

 だが、オムロンコネクトの最大の特徴は別のところにある。オムロンコネクトでは、集計したデータを活用して、健康および医療関連の様々なアプリと連携したり、各種サービスにも応用できる「オープンデータ連携」を前提としている点が大きな特徴となる。

 例えば、アップルがiPhoneに標準で提供している健康管理アプリ「ヘルスケア」と連動し、AppleWatchなどで収集したデータとともに、データの一元管理ができるようになる。アップルの「ヘルスケア」以外にも、ウェルビーの「Welbyマイカルテ」、OPTiMの「ポケットドクター」、情報医療の「curon(クロン)」、日本医療データセンターおよびヘルスデータ・プラットフォームの「PepUp」、Practechsの「HEALTHPLAYER」といったアプリとも連携。2017年1月以降には、さらに10種類のアプリと連携することを発表している。

 オムロンヘルスケアでは、SDK/APIを公開し、血圧や歩数、体重などの測定データを活用するアプリやクラウドサービスを、コンテンツプロバイダーやサービスプロバイダーが効率的に開発できるようにサポートする考えを示しており、「健康保険組合や自治体、企業など、集団での健康管理にも幅広く利用してもらえるように、多様なプロバイダーとの連携を積極的に進めていく」としている。

 医療機関が、これらデータの活用によって、遠隔医療を促進したり、保険会社がこのデータを活用して、利用者に最適化した保険サービスを用意したりといったことも考えられるだろう。
同社では、これまで、独自の健康サポートサービス「ウェルネスリンク」を展開してきたが、同サービスは、2017年12月に完全終了。今回のオムロンコネクトへの完全シフトによって、これまでのクローズ戦略から、オープン戦略へと舵を切ることも意味する。

 「データが価値を生む時代が訪れるなかで、血圧計という機器だけを開発、販売するだけではユーザーサービスにも限界がある。また、1社だけでは、新たなサービスを創出するアイデアにも限界がある。サービスプロバイダーなどに、オムロンヘルスケアが提供する血圧計や活動量計、体重体組成計で収集したデータを活用してもらうことで、なにかしらの化学反応が起こることを期待している。それがイベントゼロを実現する近道になると考えている」と、同社では語る。

 同社では、今回のオムロンコネクトの本格展開によって、これまでの「血圧計ビジネス」を、「血圧ビジネス」に転換すると表現し、血圧計を販売するビジネスに留まらず、血圧データなどを軸に、様々な企業を巻き込んだビジネスの広がりを模索していく姿勢を示す。

 オムロンヘルスケアでは、自らが新たなサービスに乗り出したり、課金型のアプリを開発したりする予定はなく、あくまでも同社製の血圧計などを購入したユーザーのサービスとしてオムロンコネクトを提供する姿勢を示す。

 だが、オムロンコネクトのデータ利用を前提としたサービスやアプリが広がれば、もちろん、オムロンヘルスケアの血圧計などの販売増加も見込まれる。血圧計ビジネスから血圧ビジネスへの転換は、日本の医療を変えることが最大の目的であるが、同時に、オムロンヘルスケアのビジネスを成長させるスプリングボードの役割を果たすことになりそうだ。

 これが、デジタル時代にオムロンヘルスケアが選択した新たなビジネスの道筋だといえる。

  
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