高血圧症は、日本人にとって、最も患者数が多い生活習慣病といわれる。
推定患者数は約4300万人。日本人の3人に1人が、高血圧症というわけだ。しかも、そのうちの2500万人が、1度も病院で治療をしたことがない未通院。これに、通院を中断した人などを含めると3750万人に達し、患者全体の87%が病院に通っていないという状況が浮き彫りになる。
高血圧症は、重症化すると、脳卒中や心筋梗塞といった脳・心血管疾患につながる。脳・心血管疾患は、日本における要介護の原因疾患の22%を占めており、第1位。死因理由でも、悪性新生物、心疾患に続いて、脳血管疾患が3位になっている。
脳・心血管疾患の発症をゼロにする
こうしたなか、オムロンヘルスケアが、脳・心血管疾患の発症をゼロにする「イベントゼロ」の取り組みを開始している。
イベントゼロとは、脳・心血管疾患の発症(イベント)をなくすことを目標としたものであり、血圧計では国内トップシェアを誇る同社が、2016年1月に打ち出した新たな事業コンセプトである。
だが、事業コンセプトとは言いながらも、収益を得る「事業」という意味合いはあまり前面には出ていない。オムロンヘルスケアの荻野勲社長は、「このコンセプトは、血圧計を売ることが目的ではない。新たな技術によって連続血圧測定を実現することで、医療を変え、日本をはじめとする世界から、脳・心血管疾患などのイベントをゼロにすることが最大の目的だ」と語る。
オムロンヘルスケアには、これまでにも医療を変えてきた経験がある。
1973年に同社第1号となる血圧計を発売した当時、血圧は病院で測るものであり、高血圧の診断は、一時点の血圧の平均値を基に行っていた。つまり、日中の血圧変化を知ることができず、経年変動や季節変動を確認するにとどまっていたのだ。また、実際には血圧が正常なのに、病院で血圧を測定すると血圧値が高くなる「白衣高血圧」の人が日本人全体の20%に達しているとの調査結果もあり、病院だけの計測結果では、いつも高い値が出るために、不要な薬剤を投与されていた可能性もあった。
だが、家庭で血圧を測れるようになったことで、毎日血圧を測るだけでなく、一日に数回測ることもできるようになり、自分の身体を自分で知り、自分で健康を維持する環境づくりが行えるようになってきた。