その代表の一人が「輪島キリモト」のブランドを展開する桐本泰一氏だ。スプーンやフォークに合う漆器にも力を入れるほか、有田焼の窯元と提携して磁器と漆を融和させた新商品も開発している。加波基樹氏も桐本氏と同様、洋食に合う漆器ブランド「TUBU」を展開している。「補助金を活かして、人を雇用し、育てていかなければ産地の発展はない」と桐本氏は言う。
輪島塗が補助金依存になったのは、産地の自助努力の不足だけからではない。国にも責任の一端はある。重要無形文化財の輪島塗には工法や材料に文化庁が定めた定義がある。また、74年に制定された「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(通称・伝産法)」でも、技法や原材料で一定の要件を満たさなければならない。
補助金を出しやすくするために国が定義を定めたことで、産地から多様性のある製品が消えた。このため、桐本氏や加波氏が造る洋食に合った漆器は「輪島塗」と呼ぶことはできないケースもある。国が決めた定義が、現代の生活に合うもの作りを阻害してしまった一面は否定できない。
伝統工芸は日本文化の一部であると同時に産業でもある。補助金が新たな雇用を生み出し、それが税収の増加にもつながるとの発想が、補助金を出す役所にも、使う側にも一層求められる時代が来ている。
現在発売中のWedge12月号では、以下の特集を組んでいます。
■特集「クールジャパンの不都合な真実」
【PART1】設立から5年経過も成果なし 官製映画会社の"惨状"
【PART2】チグハグな投資戦略 業界が求める支援の"最適化"
【PART3】これでいいのかクールジャパン 不可解な投資、疲弊する現場
【PART4】「クールジャパン」×「地方創生」 危険なマジックワードの掛け算
【PART5】覚悟のない産地への支援は「伝統工芸」を滅ぼす
【PART6】「Superdry極度乾燥(しなさい)」が世界中で大ウケするワケ
【PART7】最優先の国家プロジェクトはクリエイターの救済と海賊版対策
【Column】すしの築地、アニメの秋葉原 「聖地」で学びたい外国人が殺到
【Interview】リオ五輪閉会式演出の立役者 MIKIKO
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